ベートーヴェン時代の音楽を体験するレクチャー・コンサート
ベートーヴェンが活躍した19世紀のヴィ―ンでは、人々はどのように彼の音楽を聴いたのでしょうか?ベートーヴェンと同時代の作曲家による室内楽作品の分析を専門とし、ピティナ・ピアノ曲事典に数多くの曲目解説・作曲家解説を執筆している丸山瑶子氏(ピティナ研究会員)が解説を行うレクチャー・コンサートが開催されます。丸山氏からメッセージを寄稿していただきました。
ピティナ研究会員:丸山瑶子
皆さんは現在、演奏会や録音で音楽作品のオリジナルを手軽に聴ける時代に生きています。しかしこうした音楽の聞き方はベートーヴェン時代、けして「当たり前」のことではありませんでした。そして当時の人々が聴いて「ベートーヴェンの音楽だ」と認識していたのも、我々が聴いているのとは違う形だったのかもしれないのです。ベートーヴェン時代、音楽はどのように聴かれていたのでしょうか。
また同時に辿ってみるのは、若い宮廷音楽家ベートーヴェンの姿。青年期の彼は、自分の職場=宮廷のために作曲をしていました。その中には成熟期には書かなかった当時流行のジャンル、「ハルモニームジーク」も含まれます。作品完成までの道のりとは、棄却した楽章とは、どのような音楽だったのでしょう。
5月28日(水)18時30分より、杉並公会堂にて、18世紀と19世紀にタイムスリップしてベートーヴェンの音楽を味わう——本演奏会はこのような趣旨で行う、演奏機会がほとんどない非常に貴重な機会です。
ベートーヴェンというとフル編成のオーケストラによる交響曲や、ピアニスト・ベートーヴェンが若い頃から取り組んだピアノ・ソナタ、または緻密な構成で最晩年まで作り続けた弦楽四重奏曲が頭に浮かぶ人が多いかもしれません。しかし彼が手がけたジャンルは幅広く、時には時流に乗った編成でも書いています。
管楽八重奏曲op. 103はそうした作品の一つ。ベートーヴェンがまだボン時代にいた頃に着手し、ヴィーン移住後に改稿した作品で、当時のウィーンで人気だったハルモニー編成という、管楽器アンサンブルのために書かれています。Op. 103のフィナーレになるはずだった、ロンディーノWoO 25と共にお楽しみいただきます。
現代の私たちが聴くベートーヴェンの音楽は、19世紀の人々も同じように聞いていたと思いますか?
録音技術のないベートーヴェンの時代に管弦楽をオリジナル編成で聞ける機会は稀です。もし交響曲の演奏会を逃してしまったら……?編曲で聞けばいいじゃない!むしろ編曲で聞かれる機会の方が多かったかも……
そうだとすれば、現代の私たちはベートーヴェン時代の人々が「日常的に聴いていたベートーヴェン」を知らずにいるのかもしれません。それなら、体験してみませんか!?今回は交響曲第7番の管楽八重奏とコントラファゴットのアンサンブル編曲。1816年にヴィーンのS. A. シュタイナー社がオリジナルの管弦楽編成と同時出版した様々な編曲ヴァージョンの一つで、恐らくベートーヴェンも認めた編曲です。この初版に基づいた演奏で、皆様を19世紀にお連れします。
音楽史上も、他の作品と比べると語られる機会が少なく、また演奏の機会も少ない音楽を若き才能あふれた音楽家たちの演奏で聴くまたとない機会です。どうぞお越しください。