第15回 芸術性を高めるソルフェージュを目指して(2)音程・和声進行


構図と色彩のハーモニーが美しい
ブーローニュの森前回リポートした中級のソルフェージュ・レッスンから約3ヵ月後、再び同じクラスを取材させて頂きました。前回はリズムが中心でしたが、今回は音程がテーマ。生徒たちはどのように学んでいるのでしょうか。
今回は2つ上のクラスのレポートもお届けします。
(取材協力:パリ13区モーリス・ラヴェル音楽院)
今回のレッスンは、音程の聴き取りがポイント。まず最初のエクササイズは、マーラーの交響曲第3番(第4楽章)より、低音の聴き取りから。ホルンとチェロのユニゾンの、バス声部(チェロ)を聴き取る演習です。低音部かつpp→pppと弱いので、耳を研ぎ澄まさなければ聴き取れません。CDを3~4回繰り返し、全員が聴き取れるようになりました。
ルーブル美術館では小学生~高校生の集団をよく見かけます。音楽院の生徒と同じくらいの世代。(本文と直接関係ありません)普段あまり意識して聴くことのない音域や楽器の音は、自ずと「あまり聴こえなく」なります。こうした特定の音域を意図的に聴き取る演習を通して、多彩な音色や響きのバリエーションを認識し、記憶することができます(インプット)。またそれらが、音楽にどのような情緒的・色彩的効果を生み出しているかを学ぶことで、自分の楽器(例えばピアノ)を奏でる時に、音色にさらなる奥行きを与えることができるでしょう(アウトプット)。
次は音程の聴き取り。六度-七度(長六、短六、増六・・等、及びその転回)を中心に学びます。このクラスではピアノ、または口頭で音程を示していましたが、2つ上のクラス(第二課程3年次)では、同様のエクササイズをモーツァルト『魔笛』を用いていました。「その和声が音楽にどのような効果をもたらすか」を、自然に意識させます。
その後、以前勉強したシシリエンヌのリズム。3ヶ月前に比べると、しっかりリズムが聴き取れているようです。教材はモーツァルトのクラリネット協奏曲の抜粋を使用。モーツァルトはピアノ協奏曲23番でもこのリズムを用いていますが、ルネサンスからバロック初期に多用されたリズム形式が、モーツァルトの中でも息づいていることが分かります。
では、中級の勉強が進むとどのような内容になるのでしょうか?
- ニ短調旋律的音階の分析
- 様々な音階の紹介(五音音階、四音音階‥)
- カデンツの種類確認
- ピカルディの説明
- 音名視唱・調性の確認・歌唱
- 通奏低音に和声付け
- 専攻楽器での演奏(ピアノ、ギター、テューバ)
この日のポイントは「様々な音階と和声進行」。まずは宿題の答え合わせから。『Jardin de Myrtes(ミルトの庭)』(「La Dictee en Musique Vol.5」16番)のメロディを聴き取る問題。アラブ=アンダルシア民謡を用いて、アラブ特有のメロディを構成している音階(ニ短調旋律的音階)を分析、さらに民謡や伝統音楽の音組織である五音音階、四音音階(テトラコード)などを説明します。
次はバッハのカンタータBWV40 III.コラール「神の子の現れたまいしは」を用いて、カデンツのエクササイズ。16世紀末に作曲された既存の単旋律コラールにバッハが和声付けしたカンタータで、11小節に5種類7つのカデンツが登場します。CDを聴きながら譜面(単旋律)にカデンツの種類を書き込んでいきますが、コラールを教材に用いることで和声進行が手に取るように分かります。最終小節はピカルディの三和音。15世紀フラマン人であったピカルディの横顔が紹介されました。
バッハ作曲カンタータカデンツの種類を学んだところで、今度は数字付き低音(通奏低音)に和声付けします。教材はリュリのオペラ「アルミードの悲劇(Armide)」より、アリア『おお神よ!(O Ciel!)。なぜ通奏低音を学ぶのでしょうか?「通奏低音を勉強することで、ただ曲を弾くだけではなく、自分で音楽を作れるようになってほしいんです」とChépélov先生。先ほどのバッハ作曲カンタータが、このエクササイズの前置きになっていることが分かります。
各自和声付けができたところで、各々の楽器を持って合奏します。このクラスは10名で、専攻楽器はギター、テューバ、ピアノ等。最後は全員起立して合唱。しかし下級生クラスより声が出ない・・・「歌詞に気持ちを込めて、もっと情熱的に!」とこの曲に並々ならぬ情熱を注ぐ先生。この楽譜245ページを全てコピー・製本し、生徒に配布するほどの熱心さでした。
では、なぜソルフェージュでリュリのオペラ曲を使うのでしょうか?そこには明確な理由がありました。(次回に続く)

