ピティナ調査・研究

アンケート結果:ピアノ指導・演奏と女性特有の悩みについて その2

アンケート結果
ピアノ指導・演奏と女性特有の悩みについて その2

「ピアノ指導・演奏と女性特有の悩みについて」のアンケートへの皆様からの回答から、「その1」では、回答者の環境と、生理によって困った経験についてご紹介しました。

「その2」では、皆さんの対応策をご紹介、そしてピアノの先生と生徒との対話について考えていきたいと思います。

>>アンケート結果その1

相談
Q.9 困った時に誰かに相談できましたか?
  • その他…病院、相談しようと思ったことがない、など
「誰にも話せなかった」方が最も多く、家族や友人に話せた人も4人に1人ほどに留まりました。
Q.10-1 ピアノの先生/生徒と生理の問題について話したことはありますか
ピアノの先生と生理の問題を話したことがある方は、15%ほど。「アンケート結果その1」のように、ピアノの練習やレッスン、本番への生理による影響はこれだけ多かったにもかかわらず、それを実際にピアノ教室で話し合われた方は、非常に少ないことが分かりました。一方で、生徒と生理の話題をするように心掛けているピアノ教室もありました。
Q.10-2 ピアノの先生/生徒と生理の問題についてどのように対話していますか
  • 量が多いのできつい、だるい、頭が痛いなど
  • 女の子で5.6年生以上の生徒はマンツーマンの時に1度は私の方から話したりしている。生理の辛さをよく分かっているので、私の方からフランクに話しかけるようにしている。
  • 正直に話してトイレに行ってもよかったと思うが、当時の自分には言い出せなかった
  • 先生が男性なので言えなかった
  • 信頼関係を築けていると感じた段階では相談できると思う
  • 女性の先生が察してレッスン開始後10分程で帰されてしまった
  • 大人の生徒さんで、婦人科系の病気でしばらくレッスンを休まれる時に、少しでも不安な気持ちに寄り添えればと思い、以前自分も婦人科系の不調があり通院していたこと等を話した。
  • 自分が生理痛が酷かったので 子どもたちには、生理痛の時はレッスンを休んでもいい、痛いって言っていいよと話している。
  • 音高生の頃レッスンで、あまり良く弾けなかった時に先生に生理かどうか尋ねられたことがある。先生はその頃とある生徒から「生理2日目だから腹痛や眠気で全然弾けずすみません」と言われ、その問題に気付いたとおっしゃっていた。
  • 生徒に、困ったことがあればすぐ相談して欲しいと伝えている。
  • いつもと違うな、と感じたら、レッスン中の会話の中で体調を気遣う配慮が必要だと思う。
  • 生理で辛い時には、無理のない練習メニューや練習量を調整するようにしている。
  • コンクールや試験の2か月ほど前から、生理の時期を検討して対処や受け止め方を話し合っている。うちの教室では生理はとても重要な話題。
Q.8 どのように困った事態に対応しましたか?対策のアドバイスは
痛み・貧血対策
  • 腹痛頭痛は、無理せず市販薬や漢方薬を服用する。
  • 鉄分のサプリメントを補給しながらレッスンをする。
  • お腹に冬は腹巻きやカイロをはって、冷えないように対策。
  • 身体を冷やさない服装をする。
汚れ・不安対策
  • 念の為に可能な限りの装備をしておく(夜用ナプキン、タンポン、挟んで吸収するもの、シンクロフィット、吸水ショーツなど)
  • 自分の練習の時は意識的にこまめにトイレに行く。弾く前にも必ずトイレに行く。
  • タンポンを使うようになって、漏れの心配から解放され画期的に過ごしやすくなった。慣れれば簡単、快適。ナプキンとの併用や、月経カップも有効。
  • 汚してしまった時には、先生(女性)に話してレッスンを中断していただき、持っていたウエットティッシュで拭き取り、コロナ対策用のアルコールで消毒した。
  • 着脱やトイレが大変なドレスではなくワンピースを選ぶ。暗い色のドレスにする。
  • 時期的に怪しい時には万が一ドレスが汚れた時のために、往復の洋服をきれいめで濃い色のワンピースなどにしておく。
  • 急になった時には、コンビニに駆け込み買い物をした。会場近くにコンビニがありよかった。
  • あらかじめ、吐き気や食欲不振のために食べられそうなものを用意したり、汚した時の掃除や替えのものを準備しておいた。
  • 鎮痛剤は常に持ち歩く。
  • 待機~本番までの会場のトイレの場所を把握しておく。
身体的・精神的疲労対策
  • 弾く曲も無理せず簡単なものにする
  • あまりレッスンを詰めてやらない。ひどい時にはレッスンを休みにする
  • 精神的な問題は我慢する、そして開き直る。次回のレッスン・練習で挽回しようと考える。
  • 心身ともに負荷を増やさないように気をつけた。
  • 体をあたため、よく休む。
スケジューリング
  • 本番前については、体調が悪くなることも予定に組み、調整するようにしている。
  • とにかく今はそういう時期だと、1週間前後は自分で警戒網を張る。相手のミスも、一回指摘すれば終わりと自分でルールを決める。
  • 本番は待ち時間、リハ、着替え、移動と、トイレ中心に自分のタイムスケジュールを組む。共演者(男性含む)にも生理中と話しておくことにしている。
  • 前もっていつ生理が来るのか予測しておいて、体調の良さそうな時に多く練習時間を取れるようにする。疲れたり集中力が途切れたら無理せず休む。
常時の対策
  • いつ生理になってもおかしくない年代のお子さんが通われているので、レッスン室のトイレに生理用品(ナプキンと生理用ショーツ)を準備するようにした。
  • 体調不良の時のため、レッスンとレッスンの間を5分空けるように変更した。
  • 大豆製品をとるとPMSの症状が少し和らぐという情報が私には少し効果があったので、生徒に教えた。
Q.11 相談先などアドバイスはありますか
  • 産婦人科でピルを処方してもらえれば、期間を調整することも出来るので、大事な本番の時等はいくことをお勧めする。
  • コンクール等、大きな本番前にはピルを服用しても良いと思う。自分をコントロールすることは悪くないはず。
  • 生理痛とそれに伴う不調をかかりつけの医療機関に相談した。相談できる相手がいるだけでも、とても安心感があり良かった。
  • 生理に限らず、レッスン中はとても特異な時間なので、体調不良をすぐに訴えることのできる空気感が先生側から提供されているとありがたいと感じた。
  • 思春期の生徒が情緒不安定な時も、「この子は大変な中、来てくれたんだ」と受け止める。そういう時は絶対に「態度が悪い」とは言わない。問い詰めない。
  • 生理の影響で思い通りにいかないことがあっても、自分を責めないで。
  • 鎮痛剤は副作用もあるので、保護者にも話して、大切な本番の前に試して、身体に合う薬を探しておいてもらうとよい。
  • タンポンは若い方には勧めづらいですが、シンクロフィットは手軽に試せると思う。
自由記述より
  • 大事なコンクールで もし、たまたまタイミング悪く重なってしまったばかりに力が出しきれなかったら、これ程女性として悲しいことはないですね。
  • ピティナのコンペが2回チャンスがあるのは、どちらかは外れる可能性がありとても助かる。
  • ホールのトイレには、観客側にも主催者側にも生理用品の販売機があるとよいと思います。本番前で外に買いに行けない時が多く、人にも頼みにくいので。その時、会場や出演者の必ず誰かがなっていると考えて欲しいです。
  • 生理痛がひどいためにレッスンをお休みする子は時々いますが、普段のレッスンから重ならないようにするわけにはいかず、どうしようもありません。
  • 中年になって生理が終われば楽になるかもと期待したがそうではありませんでした。終わったと同時にホルモンバランスが崩れ50肩に。両肩完全石灰化で鉛筆が握れない位に手が痺れ、完治するまでの10年間、ステージで演奏は辛かったです。
  • 先生が男性で、生徒がお年頃の娘さんだと話しづらいのかなと思います。
  • 生理に限らず、本番は露出度の多いドレスでとても寒い思いをするので、男性はこのようなことで困らないのだろうと羨ましくなります。変化して欲しい暗黙のルールの一つです。
  • コンクールや試験の場でも、腹痛になったら、我慢せずに主催者側に伝えられる雰囲気があると良いです。
  • 男性の指導者も生理に対しての理解をしていただけるといいと思います。
  • 生徒側からすると、生理の時はレッスンを振り替えて欲しいと思うが、指導者側はそれをOKとすると週に何度も急に振り替えなければならず、現実的に難しい所があります。同じ女性なのに無理解とも思われるのも避けたいですし、他の先生方はどうされているのか知りたいです。
  • 姿勢正しく弾くことは大切ですが、生理痛で辛い時は生徒も講師も後ろにクッションを置いたり、膝掛けをしたりして臨機応変にしていいのだと思います。
  • 生徒の方から「生理で、、」とはなかなか言いづらいので、その年齢に差し掛かったら、講師から体験談を話したり、辛い時は言ってねと、言いやすいようにコミュニケーションしておくことが大切だと思いました。
  • 生理中で調子が悪い時は、周りに伝えてもおかしくない、恥ずかしくないという空気を作らないといけないと思っています。
  • 子どもたちには小学生高学年になる前に生理の話をします。生理が始まったら、子どもが産める話。もしもの時は被害者になるかもしれない話。生理痛の対処法や、レッスンをするか休むかなど、話しておきます。初潮の日がピティナの予選の日の子もいました。きっと、緊張も半端なかったのでしょう。生理不順の子も 増えている気がします。
  • ピアノとは関係ないようですが、心や体調の乱れは演奏で直ぐにわかります。音楽って鏡のようです。だから、人前で演奏する時、体調の良し悪しは観ている人には関係ないから、、最善を尽くすには、、という話をします。
  • 思春期は、特に生理を隠したい気持ちが強いのですが、大人である指導者が生徒から相談されやすい雰囲気でレッスンする時もあったほうがいいと感じます。
  • ピティナの本選がちょうど生理期間中にあたることがわかり憂鬱だったところ、意外にもいつもよりずっと軽く短い生理で助かったと思っていました。でも次の月の生理がとても重く、腹痛で何もできないくらいになったので衝撃を受け、20年以上前のことなのに今でも覚えています。

一言で「生理」と言っても、個人差が非常に大きいために、ご紹介したものが皆様に当てはまるわけではありません。また、完全に解決できる問題でもありません。しかし、こうした声があることを知っているだけでも、少しでも適切な配慮ができたり、生理に限らず様々な心身の不調を相談できる雰囲気が作れるかもしれません。今回のアンケートが、あらゆる人が活躍しやすい環境を作るための一歩目となれば幸いです。

思春期、そして成人女性がピアノ演奏・指導をしやすい環境づくりのために活用して参りたいと思います。皆さんの声をお聞かせください。また、この特集を読んでのご感想も「自由記述」にいただけましたら幸いです。

アンケート回答はこちら アンケート結果:その1