ピティナ調査・研究

野村友里愛さんレポート:ポーランド・ナウェンチェフ音楽祭

野村友里愛さんレポート
ポーランド・ナウェンチェフ音楽祭

7月17日〜28日にかけて、ポーランド東部に位置するナウェンチェフにて開催された「ナウェンチェフ音楽祭」に参加させて頂きました。 連日のコンサートに加え、主催者のKazimierz先生、奥様のトモコ先生、音楽祭に出演する先生方によるレッスンや講座、ワルシャワ観光など、とても充実した2週間になりました。

ナウンチェフ音楽祭、会場前にて
会場周辺
7/16

ワルシャワ空港に到着して、最初に向かった先は、Kazimierz Dolny という街にある、Kazimierzご夫妻の別荘です。先ずは、別荘隣りのアットホームな雰囲気のカフェへと案内していただきました。ここでは毎日、参加者が各々集まり、会話を楽しみながらお料理をいただくことになります。

休憩後、別荘内にあるピアノ室にて、まる二日ぶりとなるピアノでベートーヴェンのソナタを練習中…視線の先にはベートーヴェンの肖像画があり、とても身が引き締まりました(笑)

お世話になったカフェ
別荘の練習室にて
7/17

到着翌日は会場となるCultural Center(Naleczów)ホールでのリハーサル。ホールの響きを確認後、地元テレビ局の取材を受けました。今回で第26回目となる「ナウェンチェフ音楽祭」、このフェスティバルを大切に育まれてきたKazimierzご夫妻のご尽力のおかげで、地元の方々の歓迎ムードを肌で感じることができました。

Kazimierz Dolnyに戻り、別荘から徒歩7分ほどの場所にあるWikarówkaというサロンに移動しました。こちらは先ほどとは対照的に、音がとても反響する空間だったので、ペダリングや鍵盤のタッチに気を使いながら、確認作業を行っていきました。

Cultural Center
Wikarówka
7/18

今日はトモコ先生のレッスンです。ベートーヴェンならではのタッチや細かい点を丁寧に教えていただきました。アーティキュレーションについても指導していただき、違う視点でこの作品と向き合うことができました。

7/19

午前中はWikarówkaでの練習、窓の外には緑が広がり、開放感のあるステキなサロンです。その後、街の広場を一巡り、「アーティストが集う芸術の街」と呼ばれるに相応しく、画廊が至る所にあり、目の保養になりました。さて、別荘に戻り練習再開です!

日も暮れかけて涼しくなった頃、別荘近くのヴィスワ川を散策しました。自然とふれ合ったり、心地の良い時間を過ごしていると、時間の流れ方が日本にいる時とはまるで違うように感じます。徐々に五感が研ぎ澄まされていくようです。

Kazimierz Dolnyの街並
Kazimierz Dolnyの街並
7/20

Kazimierz先生のレッスンでベートーヴェンのソナタOp.81aをみていただきました。音と音の繋がりやその変化を大切にされているKazimierz先生の姿勢は、音楽に対する向き合い方を考えさせられるきっかけになりました。

Kazimierz先生のレッスン
7/21

いよいよリサイタル本番です!

アンコールを弾き終えて立ち上がった瞬間、目の前に広がるスタンディングオベーション。このような経験は初めてで、会場のお客様との一体感、言葉では表せないほどの喜び…ピアノを演奏するってこんなに幸せなんだという想いが胸いっぱいに広がりました。

ロビーでは、たくさんのお客様から温かい言葉をかけていただきました。中には涙を流しながら気持ちを伝えてくださる方もいて、心から嬉しかったのを今でもハッキリと覚えています。

葛藤や苦しみの連続、不安を抱えたまま心から音楽を楽しめない日々が続いていたので、大切なことを見失いそうになっていました。

皆様の想いがとても励みになり、より一層頑張ろうと思えました。

アンコール
Franz Liszt (1811‐1886)
Ungarische rhapsodie cis-moll S.244/12
ソロコンサート
7/22

観光1日目。ポーランドの古都、Lublinに向かいました。有名な観光スポットとして知られているルブリン城は、第二次世界大戦時には共産党に反抗した政治犯の収容所として使われたりと、ポーランドの歴史が色濃く刻まれたお城です。また、お城の展望台からはルブリンの街並みを一望できます。ルブリンはウクライナと隣接していると聞き、この美しい光景が広がった先を想像すると、とても複雑な気持ちになりました。

Kazimierz Dolnyに戻り、近くの教会のオルガンコンサートに足を運びました。教会内に響き渡る重厚なオルガンの音色は、鼓膜を通して心までも震わせるようでした。

ルブリンの街並み
Parish Church
オルガンコンサートのプログラム
7/23

観光2日目。まずはワルシャワ空港へ向かい、北村明日人さん、フランスからのミシェル先生と合流しました。空港から1時間ほど車を走らせ、ジェラゾヴァ・ヴォラ村にあるショパン生家へと向かいました。生家を取り囲む緑が美しい庭園では、途中、小雨混じりになりながらも、運良くピアノの生演奏を聴くことができました。

生家を後にして、ワルシャワのショパンの心臓が眠る聖十字架教会へと移動しました。厳かな雰囲気のなか、ショパンの心臓が納められた石柱の前に立つと胸がいっぱいになりました。

ショパンの遺した作品が、今もなお、世界中の人々に愛され受け継がれているということ…その作品を演奏できるという奇跡を改めて噛み締めていました。

ショパン生家
ショパンの心臓が眠る聖十字架教会
7/24~7/25

イタリアのエロイサ先生のレッスンでは、ショパンのバラード3番・4番を、フランスのミシェル先生のレッスンでは、ひき続きショパンのバラード3番をみていただきました。本番の会場を利用してのレッスンだったので、どちらの先生もホールの空間を意識し、響きやペダリングにこだわっていらっしゃいました。

アントネラさんの講座では、独自の発展を遂げてきたブラジルのクラシック音楽について学びました。演奏やハンドブックを交えての講座だったので、興味深く聞かせていただきました。

レクチャーを終えて
7/26

Wikarówkaにて、1日2回公演のミニコンサートに出演させていただきました。終演後には、ちょっとしたお茶会が用意されていて、Kazimierzご夫妻が地域の方々とのふれあいをとても大事にされている様子に、気持ちが温かくなりました。

ミニコンサート(Wikarówka)
7/27

Cultural Center(Naleczów)にてKazimierz先生によるコンチェルトレッスンに始まり、夜は Student Concert です。

自ら指揮を振られるKazimierz先生には、最終日に演奏するショパンの協奏曲第1番をみていただきました。ポーランドご出身のKazimierz先生が想うショパンを音を通して伝えてくださいました。

滞在中、3度目となるStudent Concertでは、リハーサルも含め、他の出演者の演奏も聴けて、新たな視点を得ることができました。

Student Concert 終演後
7/28

音楽祭の最終日はコンチェルトです。オーケストラの方々との初顔合わせ、リハーサルを経て、いよいよ本番です!

舞台を前にして、初めて訪れたポーランドで見たもの、感じたこと、様々な想いが込み上げてきました。

リハーサル風景
コンチェルト 終演後

第26回ナウェンチェフ音楽祭は、18日から28日(22、23日を除く)まで、毎晩80分〜90分におよぶリサイタル、合同コンサート、コンチェルトへと続き、連日、大盛況のうちに幕を閉じました。

ポーランドの聴衆の皆様の前で演奏する機会に恵まれたこと、この様な機会を作ってくださったKazimierz先生、トモコ先生に深く感謝致します。

全日程に足を運んでくださったお客様もいたほどで、反響の大きさを感じました。

演奏する姿を描いてくださった画家の方や想いを込めてミサンガを編んできてくれた女の子とお話しできたり、音楽を通しての交流に感動する場面がたくさんありました。

全日程のプログラム
目から何か…
描いていただきました
まとめ

音楽を愛する方々と共に過ごし、音楽を楽しむ毎日、最終日が近付くにつれ少しずつ寂しい気持ちになり、改めて、この2週間が特別な時間だったことに気付かされます。充実したスケジュールの中、様々な刺激を受け、音楽に対する想いを更なるものとしました。

最後に
この派遣はクラウドファンディング、並びにピティナ関係の皆さまのご支援のおかげで実現することができました。貴重な経験と学びの機会を与えてくださり、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。

調査・研究へのご支援