ピティナ調査・研究

お客様と一緒に作り上げる時間に喜びを~伊賀あゆみ先生インタビュー

お客様と一緒に作り上げる時間に喜びを
伊賀 あゆみ先生 インタビュー
顔写真

ピティナや、その他のステージを客席からご覧になって、演奏以外の部分で気になられていることはありますか?

アドバイスや講評を書くことにも必死なのですが、なるべく顔を上げて 演奏前の様子も見る ようにしていますね。
ステージに登場する姿勢や、歩き方、表情で緊張度合いや気持ちの強さなどは見るだけで伝わってきます。やはり出てきたところから"表現"は始まっていると思うので、演奏する前からどれくらいその曲に入り込んだり集中しているか、座ってから弾き始めるまでの "間"、 曲に合った呼吸感 などを意識されるとより客席に伝わるのではないかと思います。

ご自身がステージで演奏される時に何か意識されていることはありますか?

まず舞台に登場する時は、少し微笑んで、 柔らかい表情 を心がけています。
ここがお客様とのファーストコンタクトになるので、聴いてくださる皆さんを見渡すように、なるべく遠くまで意識した目線で客席を見るようにしています。また微笑むことで 自分の緊張をほぐす 、という効果もあるんですよね。自然体でリラックスした状態を演奏する前に作れるといいですね。

少しおめかしすることもステージに立つ楽しみだと思いますが、普段と違うからこそ気をつけるべきポイントはありますか?

まず靴ですね。客席から見ていて、あの方はあんまり履き慣れていない靴で演奏しているんじゃないかな、と思うことがあります。
私自身はだいたい4cm以下の高さで、細くないヒールのものを選んでいます。あと靴底があまり厚いとペダルの操作に影響がありますし、ブーツのようなものも足首が固定されてしまうので、履かないですね。
衣装に関しては、もちろん作曲家や作品に合わせて選ぶこともありますし、良い演奏が出来た時のドレスや同じ色のドレスを "ゲン担ぎ" で着ることもあります。
アクセサリーはあまり着けないのですが、大振りなものや音が出てしまうようなものは避けるようにしています。そういうものは自分も気になるし、お客様の集中を妨げることにもなるので。
お客様と演奏者、 お互いが気持ちよく集中できる空間 を一緒につくり上げることが大事だと思います。
そのためにも実際に靴や衣装を全て身につけ、 本番さながらの練習 をして慣れることが大切ですね!

読者の皆さんへメッセージをお願いします!

ステージは 自己表現の場 です。とにかく色々やってみる、試してみることで自分のルーティンのようなものができてきます。気の持ち方だったり、ちょっとした自分の中での決まり事を作ってみたり、様々な工夫をしてみることで より音楽に集中 できると思います。
ぜひたくさんのステージを経験して、 お客様と一緒につくり上げる時間 に喜びを感じて下さい!

会場で自分が演奏する姿をイメージしよう!

私は本番前にホールでリハーサルができる時には 会場を見渡し、お客様が入った状態を想像する ようにしています。事前にその舞台と客席のサイズ感を把握できていると、いざ本番になった時にも広い空間を意識した演奏へとつながるので。
そういう時間がとれない時には、舞台袖からステージを覗いたりして、そこで 自分の弾く姿をいいイメージで持つ ようにしています。

いが あゆみ◎東京音楽大学付属高校を経て、東京音楽大学卒業、同大学院伴奏研究領域を首席で修了。大学院在学中、奨学金を受けイギリス王立音楽院に短期留学。全日本学生音楽コンクール高校の部第2位。ピティナ・ピアノコンペティションG級、特級で金賞受賞。2000年のCDデビューを機に、 全国でコンサート活動を行う。小学校コンサートにも力を入れ、ピティナ、文化庁による芸術家派遣等でこれまでに全国110校以上で開催。2008年より山口雅敏とのピアノデュオ活動も開始。超絶技巧を駆使した演奏とパフォーマンス、オリジナル編曲、珍しい作品の世界初演を行い「進化系連弾」と呼ばれ、ロシア・ポーランドでもコンサートを行う。これまでに、世界初録音を多数含む3枚のCDをリリース。現在、東京音楽大学でソロ・室内楽の後進指導にもあたっている。