登場から演奏は始まっている~安嶋健太郎先生インタビュー
ピティナや、その他のステージを客席からご覧になって、演奏以外の部分で気になられていることはありますか?
行進のように出てきたり、お辞儀が前屈のようになっていたりといった姿を見ると「微笑ましいな」と思う事もありますが、やはり
舞台姿が美しい
に越したことはないですね。
生徒たちには「演奏前後の入退場の歩き方や、振る舞いだけでも素晴らしい"演奏"だったと思われるような動きをイメージして」と話しています。
ご自身がステージで演奏される時に何か意識されていることはありますか?
コンクールに出場していた頃は楽器がどのような状態か、どのような響きなのか、前の奏者のピアノの椅子の高さはどのくらいだろうかなど、落ち着くための時間が必要でしたが、幸いなことに今は演奏前にピアノの状態や椅子の高さを確認する事ができます。暗いステージが明るくなって、どのタイミングで出るか。椅子に座ってから音を出すまでの流れは、
舞台に出る前からイメージ
するようにしています。
器や盛り付けによって味の印象が変わるという点で、 演奏と料理は似た面が あります。演奏だけで納得して欲しいと思っていた時期もありますが、今は 立ち居振る舞いや衣装も演奏の一部 だと思っています。「プロコフィエフの戦争ソナタを弾くのにヒラヒラのお姫様ドレスはどうだろう?」「今の髪色にワイン色のドレスを合わせると顔色が悪く見えるよ」など、アドバイスする事もあります。
ピティナのトークコンサートのような場合は小さいお子さんも多いので、なるべく笑顔で。そして、光沢のあるシャツや、華やかな色のタイやチーフなどを選んだり、スーツ以外のものを選んだりもします。女の子たちはドレスを着て非日常の世界を楽しんでいるので「男の子も遊べるよ」という意味もこめて。
読者の皆さんへメッセージをお願いします!
恥ずかしそうに舞台に登場したり「まだ完成していませんが」などと控えめな演奏前のコメントに接する機会も少なくないのですが、舞台に立つなら 謙遜の美学はひとまず忘れて 。ステージは 「自分が主役!」 の気持ちで、思いきり楽しみましょう!
ステージでのイメージを持つためにも、コンサートホールに足を運んで沢山の
生の演奏
に接して欲し
いと思います。
演奏会独特の空気感
というのは、CDや映像では体感出来ないものですから。
意識しているかどうかは別にして、演奏会って音だけを聴いているわけではないんです。演奏だけでなく、舞台姿を含めて
「憧れる」
気持ち、感性が上達につながるのではないでしょうか。