ピティナ調査・研究

「湯山昭の音楽」記念インタビュー~ピアノ曲事典に音源&解説文一挙公開!~ 

「湯山昭の音楽」コンサート記念インタビュー
~ピアノ曲事典に音源&解説文一挙公開!~
はじめに
~150刷以上を重ねる「お菓子の世界」の魅力

このたび作曲家 湯山昭さんのご息女で、著述家、音楽プロデューサーの湯山玲子さんの協力のもと、ピアノ曲事典に湯山昭「お菓子の世界」の音源と解説文を加えることができました。

「お菓子の世界」は150重版を誇る大ロングセラーのピアノ曲集です。

お菓子の世界」は、今日ではブルグミュラーなどに続いて、子ども向けの練習曲として周知されていますが、新たにビアノの練習を始めたり再開した大人たちはもちろん、昔のレッスンを振り返って懐かしみ、もう一度音楽に親しむよすがにもなりえる、練習曲という枠組みを大きく超えた作品です。

その理由はおそらく、お菓子と音楽を「融合」させた昭先生のポップなセンスにあります。曲のタイトルに親しみやすいお菓子の名前が付いていることで、演奏者はその世代に関わらず、自身の体験の中からのお菓子のイメージと曲とを重ね合わせて、イマジネーションが湧いてくることでしょう。

井内澄子先生による「お菓子の世界」演奏

ピアノ曲事典にご提供いただいた音源は井内澄子先生の演奏によるものです。約半世紀前、ちょうど「お菓子の世界」が出版されたころに放映されていた、NHK「ピアノのおけいこ」の楽しいレッスンを思い出すという方もいらっしゃるかもしれません。

湯山玲子さんインタビュー

玲子さんへのインタビューでは、昭先生との思い出の数々をうかがうことができました。

クラシック音楽の作曲家である父・昭先生の存在感が非常に強かったという家庭環境のなか、子どものころの玲子さんはロック、ポップス一般の洋楽に傾倒し、反発心を覚えていた時期もおありだったそうです。そんな時期でも玲子さんが楽曲の命名に関わったり、音楽内容についての意見を求められることもあったという、貴重な誕生秘話をいくつかお伺いしました。

たとえば第8曲 の「チョコ・バー」は玲子さんが当時よく食べていたお菓子で、それを見た昭先生が興味を持ち、そのCMソングからインスピレーションを受け作曲されたそうです。チョコレートの原材料の故郷は中南米。ブラックミュージック由来のジャジーな音楽が印象的ですね。
マロン・グラッセ」は栗を砂糖漬けにしたフランスのお菓子で、作曲当時はまだ珍しい食べものでした(今でも高級なイメージがありますね!)が、昭先生がその味に大いに感動されていたとのこと。 ちなみに、昭先生の作曲のお供はドロップ。作曲というお仕事は、脳に大量の「ブドウ糖」が必要だったのかもしれません…!

このようにして、世界のたくさんのお菓子をタイトルにした多彩な音楽が創られました。昭先生はフランス音楽の系譜に正統的に連なる作曲家でもあります。「子ども向けで楽しい」ばかりでなく、上品な明るさや色彩感ある転調や和声があってこそ、今日でも定番化されているのでしょう。

玲子さんが子供時代を過ぎてから、お父様と独立した個人として一対一で話が出来るようになってやっと関係が改善。それどころか、若く見える昭先生と、マチュアな装いの玲子さんとふたりで食事に行くと「ずいぶんと若い奥様ですね」と言われたこともあったとか。ご家族の存在が創作へ計り知れないほどの影響をもたらしていたことが感じられるお話でした。

ロー磨秀さんインタビュー

3月27日開催「湯山昭の音楽」へ出演予定のピアニスト、ロー磨秀さんへもお話をうかがいました。

(演奏される予定の)ヴァイオリンとピアノのための小奏鳴曲」の印象はどのようなものですか? 

私の中で「湯山昭」といえばやはり「お菓子の世界」でした。小学生のころは楽しく弾いたり聴いたりしていたのですが、今、感じることの一つは「フランス」の影響です。この「ソナチネ」ですが「お菓子の世界」がソフトな世界観だったのに対して、少し「エッジー」です。意外な転調や響きの面白さは「6人組」による実験的な音楽の数々を彷彿とさせるところもあります。湯山先生がキャリアの最初期にかかれた曲ですから「様々なスタイルを模索されていたのかな?」ということも感じます。多くの発見があり、準備のしがいがある曲ですね。

湯山作品とかかわった思い出(小さいころに演奏していた)などはありますか?

先にもお話したように「お菓子の世界」は大好きな曲集でした。初めて触れたのは小学校3~4年生だったと思います。当時の先生に「あなたに向いているかも」と薦めていただいたのですが、「バウムクーヘン」「ホットケーキ」「チョコバー」といった曲が好きで、どっぷりハマりました。レッスンで習っていない曲の初見も楽しんでみたり。今ふり返ると曲集全体に流れる茶目っ気やリズムの面白さの他に、曲集としての構成の見事さにも気づかされます。

今回のご出演のきっかけは?

昨年9月のリサイタルにいらした湯山玲子さんからドビュッシーの演奏などをおほめ頂き、その後、光栄なことにこの企画にお呼び頂きました。「湯山昭の音楽」は既に実施された高山公園(2021年2月27日に開催)が盛況で、その時のメンバーに一人だけ新しく加わらせて頂くので、少し緊張しています笑

―今後のローさん自身のご活動についてもお伺いさせてください。

今年は「クラシック」の活動での本番が複数決まっています。室内楽 他楽器奏者とのコラボを楽しみにしているところです。

歌は依然としてライブの実施が難しい状況なのですが、コンスタントに続けたいと思います。

3月のコンサート、そして新年度の活動ともに楽しみですね。

ロー磨秀さん、ありがとうございます。

クラシックのピアニストと、シンガーソングライターとしての活動を並行するロー磨秀さんの最新情報はこちら 

コンサート「湯山昭の音楽」公演情報

豪華アーティストが次々に登場する湯山昭のトリビュート・コンサート『湯山昭の音楽』は2022年3月27日(日)東京オペラシティ コンサートホールで開催されます。 「お菓子の世界」も全曲演奏予定!

『湯山昭の音楽』
What The World Needs Akira Yuyama
日時 2022年3月27日(日)14:15開場/15:00開演
会場 東京オペラシティ コンサートホール
価格 S席 8,800円/A席 7,700円 (税込/全席指定)
  • 3歳未満のお子様は入場をお断りさせていただきます。
先行販売(先着) 2022年1月20日(木)10:00~1月23日(日) 23:59
一般発売 2022年1月26日(水)10:00~
出演 新垣隆(ピアノ)/林正子(ソプラノ)/上野耕平(アルトサクソフォーン )/ 池上英樹(マリンバ )/福田廉之介(ヴァイオリン )/ロー磨秀(ピアノ)/ THE LEGEND(男声オペラユニット)
ナビゲーター:湯山玲子
演奏予定曲/演奏者 ピアノ曲集『お菓子の世界』より「序曲・お菓子のベルトコンベアー」他 /新垣隆 歌曲集『子供のために』より「鳴子を弾いても」他 歌曲集『カレンダー』より「七月/夏のレセプション」他/林正子 「愛の主題による三章」「電話」/THE LEGENDメンバー 「マリンバとアルトサクソフォーンのためのディヴェルティメント」/上野耕平、池上英樹 「ヴァイオリンとピアノのための小奏鳴曲」/福田廉之介、ロー磨秀 男声合唱曲「ゆうやけの歌」(男声8声編曲版):THE LEGEND
  • 曲目、演奏者は変更になる可能性があります。
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