「1000分のベートーヴェン」と称しているこの「ベートーヴェンピアノソロ曲全曲演奏プロジェクト」ですが、Covid-19の影響が見通せなかった時期の「第3回」「第4回」「第5回」の公演を断念することを余儀なくされました。しかし情勢の変化により、先日7月24日にシリーズ3回目の演奏会となる「第6回」を無事に終えることができました。 ご来場の皆様、ご理解くださった皆様に心より御礼申し上げます。なお中止となった、第3～5回は、2021年に振替公演として実施する予定です。

「第6回」の目玉は何と言ってもベートーヴェンのピアノ作品最大の山「ハンマークラヴィーア」ソナタでした。
もともとはシリーズの折り返し、後半に入るタイミングで迎え るはずの大曲です。
このような長い休止期間明けにいきなりクライマックスを迎えることになり、精神的にも体力的にも非常にきついものがありましたが、どうにか乗り越えることができて少し肩の荷が下りました。
若書きの、まだ幾分散漫とも言える作品をも読み込み、その随所に光る後年の大作の片鱗を見てほくそ笑むのを楽しみつつ、彼の創作の核となるピアノソナタを軸に、引き続き黙々と弾き進めてまいります。

それにしてもこのベートーヴェン記念年に音楽家としてこのような試練を与えられていることには、妙な符合を感じずにはいられません。
いかにもベートーヴェンらしいこの言葉「 Durch Leiden Freude（苦悩を抜けて、歓喜へ）」を、あらためてモットーに掲げたいと思います。

2020年8月6日　菊地裕介