日本・ポーランド国交樹立100周年記念「ショパン—200年の肖像」展
レポート:中野春花
日本・ポーランドの国交樹立100周年を記念した展覧会「ショパン——200年の肖像」が2019年10月12日、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開幕する(以後2020年より福岡、東京、静岡へ巡回予定)。東京都内の駐日ポーランド大使館で4月9日、開幕に向けた記者発表会が行われた。ヤツェク・イズィドルチク駐日ポーランド大使は「これからの100年は、展覧会が象徴するように日本との結びつきがさらに強くなるだろう」と挨拶。国立フリデリク・ショパン研究所所長のアルトゥル・シュクレネル氏とフリデリク・ショパン博物館のキュレーター、マルタ・タバキエルニク氏によるビデオメッセージが上映され、ショパン国際ピアノコンクールにて入賞経験を持つ高橋多佳子さんがピアノ演奏を披露した。
ポーランドの国立フリデリク・ショパン研究所の全面的な協力のもと企画される本展では、多彩な美術作品や資料を通じ、ショパンの音楽と生涯を主軸に生誕後約200年にわたるショパン像を紹介する。展示品は、フリデリク・ショパン博物館から出展の美術作品や資料を中心に、ワルシャワ国立博物館、オランダ・ドルトレヒト美術館、そして日本国内の資料を含めた約250点を展観する。
ショパンの自筆の楽譜は、非常に厳重に保管されており、所蔵するフリデリク・ショパン博物館での公開も限られている。今回は日本にいながらにして、間近で鑑賞できる稀有な機会だ。加えて自筆の手紙も展示される。ショパンは手紙以外の文章を書き残していないため、ショパンの人となりを知る手立てとして手紙は重要な役割を担う。
1833年、エチュード作品10の初版がフランス、ドイツ、イギリスで同時に出版された。本展で展示されるのはフランス初版に使われた製版用の自筆譜で、現存するこの曲唯一の自筆譜である。(紙葉3枚、両面6頁)この資料からは、出版されたものより速度表示が速く、左手の伴奏を二度変更、最後2小節の右手和音の音も変えていることが分かる。さらに、当初は作品10の8・9・10番を一組の作品にしようと構想していたことなど、ショパンの試行錯誤の跡を窺うこともできる。
ショパンの肖像画の中でも特に有名な作品の一つであるアリ・シェフェールの作品が日本初公開される。画家シェフェールのパリの住居には芸術家たちが集い、ショパンやリストらが演奏会を開いていた。シェフェールの描くショパンは貴族的で知的でありながら、画家に向けたその眼差しは実に暖い。本展ではショパンの活躍したサロンやオペラ座の様子を俯瞰できるロマン主義の絵画や、ショパンが病床で人を呼ぶために日常的に使用していたベルなども展示する。
日本人にとってもショパンは心を惹きつけてやまない特別な存在だ。本展ではこれまで語られる機会が少なかった明治期から第二次世界大戦までの日本でのショパン受容を紹介する。まさに日ポ国交樹立100周年記念にふさわしいこの展示では、明治期に輸入された楽譜や日本で出版されたショパンにまつわる書物、日本最初の「ショパン弾き」澤田柳吉に関する資料などを展観する。ショパンへの一層の興味・関心を喚起するだけでなく、両国間の文化の相互理解がより深まるだろう。
展示会場には高性能のオーディオシステムを設置。さらに展覧会と連動して本展オリジナルのレクチャーコンサートやピアノリサイタル、講演会など多種多様な企画が展開される予定だ。まさにショパンを見て、聴いて、体感できる展覧会になると期待できるだろう。
● 開催情報
会場 | 兵庫県立美術館 ギャラリー棟 |
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会期 | 2019年10月12日(土)~11月24日(日) |
主催 | 神戸新聞社、サンテレビジョン 共催 兵庫県立美術館 |
会場 | 久留米市立美術館 |
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会期 | 2020年2月1日(土)~3月22日(日) |
主催 | 久留米市美術館、読売新聞社、RKB毎日放送 |
会場 | 練馬区立美術館 |
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会期 | 2020年4月~6月に開催予定 |
会場 | 静岡市美術館 |
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会期 | 2020年8月~9月に開催予定 |