第13回:YouTubeアナリティクスで動画単位の分析をしてみましょう
YouTubeアナリティクスで動画単位の分析をしてみましょう
前回の記事ではチャンネルの分析を行い、全体としての課題が浮き彫りになりました。
今回はそこである程度フォーカスした問題意識と共に、それらを具体的に構成する動画単位の分析へと移ります。
まずは復習ですが、チャンネル全体の傾向を把握しておくと、動画単位の分析においても気づきが多くなります。次にどのようなアクションを行えば良いのか?というヒントも多く得られることでしょう。
例えば・・・
- チャンネル全体としては女性の視聴ユーザーが多いのに、この動画は男性視聴者が多いな!
- チャンネル全体としては登録者の視聴割合やリピーターが多いのに、この動画は新規視聴者が多いな!
- チャンネル全体としては登録者を順調に獲得できていると思っていたが、この動画は登録者の減少を生んでいるな!
このようなことがうかがい知れるわけです。
ちなみにこの動画単位の分析を行う導線は現在、2通りあります。
- YouTubeStudio>コンテンツ>アナリティクス(動画単位)
- YouTubeStudio>アナリティクス(全体)>アナリティクス(動画単位)
どちらにせよ最終的には同じページを確認することになりますので、「慣れているほう」で構わないのですが、下のように使い分けると便利かもしれません。
- 最近公開した動画を確認したい場合:YouTubeStudio>コンテンツ>アナリティクス(動画単位)
- 最近パフォーマンスの良い動画を確認したい場合:YouTubeStudio>アナリティクス(全体)>アナリティクス(動画単位)
というのも、YouTubeの特性として、直近1か月間の新規公開動画から得られる視聴回数の、同じ期間のチャンネル全体の視聴回数に占める割合は20%-50%くらいであることが多いのです(運営歴、公開本数にもよりますが)。つまり、過去のアーカイブ動画のパフォーマンスが無視できません。
ですので現状を正しく把握しようとした場合、「いま公開した動画」と「いまパフォーマンスの良い動画」の両方をチェックすることをおすすめいたします。
ちなみにパフォーマンスといった時には…
- 視聴回数(視聴時間)
- 推定収益
- チャンネル登録者
は少なくとも意識したほうが良いでしょう。
この3つの指標は、アナリティクス(全体)>詳細(詳細モード)で確認できる動画の一覧でも並び替えが可能な指標となっています。
- 過去28日間で最も視聴されている動画は?過去7日間だと?→いまの視聴回数(時間)の把握
- 過去28日間で最も動画は推定収益が大きい動画は?過去90日間だと?→最近の収益性の把握(必ずしも収益性が高いわけではない)
- 過去28日間で最もチャンネル登録者を獲得している動画は?過去90日間だと?→最近の新規視聴者の獲得経路の把握(必ずしも新規視聴者獲得ができるわけではない)
こういった動画単位の分析を行うと、
- どの動画で視聴者を開拓し
- どの動画を視聴していただき
- どの動画で収益を生んでいるのか
という確認ができます。
これらにミスマッチが無ければ効率的にチャンネルを成長させることができます(収益が順調に上がれば次のコンテンツ制作への投資ができます)。
「ミスマッチ」のイメージですが・・・
- 過去公開した年配の男性視聴者向けの動画で登録者を開拓しているが、
- 最近公開している動画は若い女性視聴者向けの動画であって、
- 実は収益(ユーザー課金も含む)のほとんどが年配の男性視聴者向け動画で得ている
といった例が挙げられます。
これまで度々コンテンツ戦略における3Hにも触れてきました。
Hero、Helpといった比較的視聴者を獲得しやすい動画で新規視聴者を開拓し、Hubで継続視聴を実現させる。そのためにはその視聴ユーザーのミスマッチがあっては効率的に進みません。
「これまで通り年配男性だけをターゲットにしていてはチャンネルが伸びない!」という意思決定のもとリニューアルを図っている最中というような明確な意図がある場合は、もちろん「ミス」とはいえません。
ともかく、以上のような視点でYouTubeアナリティクスによる動画単位の分析をしていただくと良いと思いますが、以下に基本的な各指標のチェックポイントを挙げます。
- 視聴回数とその推移
通常の(このチャンネルにとっての)パフォーマンスとの比較の中で推移を確認できます。
上記Aの場合、Hubコンテンツとしてはパフォーマンスの良い動画で、
公開初日の視聴回数の伸びが大きく(濃いファン、リピーターの視聴)、とはいうものの平均と比較すると微増傾向で伸び続けています。
上記Bの場合は、Heroコンテンツとしてパフォーマンスの良い動画で、公開初日は視聴回数は少なかったものの、7日後に急増し、また1年後にも急増しているという2度ピークを生んでいます。
ちなみにこのAとBを「視聴者>チャンネル登録者の総再生時間」で確認してみると…
となり、AはまさにHubとして機能し、BはHeroとして機能していることが分かります。
その後「視聴者>年齢と性別」を確認しそれぞれにズレが無いかと確認し一安心といったところですが、さらに深堀するとなぜAは優秀なHubだけでなく、B的なHeroとしても機能しなかったのか?というところにヒントがある気もします。
- そもそもHeroにはなりえない動画であった(ファン限定コンテンツ)
- サムネイルと動画タイトルを工夫すればHeroにもなりえた動画であった
という二種類の結論が想定されますが、その判断のヒントになる可能性があるのが、「エンゲージメント>視聴者維持率」になります。
アナリティクスでは上記のように説明してくれていますが、私個人の経験上、安定的に多くの視聴回数を獲得しているHubコンテンツは一番上の安定型であるケースが多いように思います。
またバズるHeroコンテンツに多いのは3番目の山のある推移であり、その内容(予告)がサムネイルと動画タイトルに反映されていることが大井と感じております。(もちろん視聴維持だけでなく、圧倒的なインプレッションのクリック率の高さでHeroとなるケースも多いのですが…)
もちろんHeroだけでなく安定成長には優秀なHubコンテンツも必要になります。言い換えると「既存のファン(チャンネル登録者やリピーター)へのウケが良かったのかどうか」が問われるということです。
アナリティクスではありませんが、YouTubeStudio>ダッシュボード>最新の動画のパフォーマンスで、最新公開動画の視聴回数を、直近10本の動画を対象に、公開後同じ時間でのランキングしてくれます。
公開直後はまさに既存のファンのリアクションが把握できます。その後時間の経過とともに新規視聴者への露出もできているかどうかが分かります。Heroとして機能しているかどうかチェックできるわけです。
またアナリティクスでは「リアルタイム」で確認するという方法もあります。
定期的にチェックしておくと、時間単位や分単位でも通常との差異の中から既存のファンのリアクションに気づくことができます。
以上のようにチャンネル全体の把握とある程度の問題意識をもって動画単位の分析を行っていただくことで、よりご自身のコンテンツがどのように機能しているのかを客観的に捉えることができます。ぜひお試しいただければと思います。
とはいうものの…
良いヒント、発見があったとしても既存のものとまったく同じコンテンツを展開するわけにはいきません。それがYouTubeの難しさです。
ということで次回は動画をグループ化することで次のアクションにつなげやすくする、というテクニックをご紹介させていただきます。