ピティナ調査・研究

第11回:楽器演奏者(弾き語りを含む)のためのYouTubeにおける著作権との付き合い方

Youtube活用講座
第11回
楽器演奏者(弾き語りを含む)のためのYouTubeにおける著作権との付き合い方
  • 音楽著作権
  • 申し立て
  • コピーライト

今回は、楽器演奏者(弾き語りを含む)の皆様にフォーカスして、YouTubeにおける著作権問題との付き合い方についてお話させていただきます。

ピアニストの方の中には「YouTubeにご自身の演奏動画を公開してみよう!」と初めてアップロードした途端に…

  • すぐに著作権の申し立てが付き、怖くなってその動画を削除した…という例
  • さらにはYouTube自体が怖くなってチャンネル運営をあきらた…という例

などお聞きしております。

音楽に対して真摯に向き合っている方々がこのような事態に見舞われ、せっかくの才能がYoutubeで発揮されないのは非常にもったいないことです。

今回の講座をご覧いただき、ぜひ安心してYouTubeでの音楽活動を楽しんでいただければと考えております。

YouTubeは法律ではありません

当たり前ですが、YouTubeは各国の法律に則ったwebサービスを展開しているだけで、法律そのものではありません。

「YouTubeからコピーライトクレームが来た!」ということが=「法律に違反している!」ということではありません。

逆もしかりです。

「法律的にOKだから、YouTubeでもOKでしょ!」ということもありません。
YouTubeはYouTubeの規約、各種ガイドラインがありますから、それらに則って利用しなければなりません。

著作権の問題についても同様です。

「当事者」は著作権者とクリエイターです。

YouTubeはあくまでもその2者間が良い関係を維持できるように、場合によっては法的に争う前の段階で「最大限双方納得感のある着地ができるように」というシステム面でのサポートを行っているに過ぎません

このことが分かっていないと、整理した形で理解・判断できませんので、まず大前提として把握していただければと思います。

日本における著作権

YouTubeはいったん置いておき、日本国内における法律としての著作権は一部例外を除いて「親告罪」となります。

私は法律の専門家ではありませんが、ざっくりイメージとして説明させていただくと、

著作権者の告訴がなければ起訴されない

ということになります。

著作権法では「著作権者の意志に反してまで取り締まりを行う必要はない」という理由により親告罪が採用されています。

ちなみに一部例外(非親告罪化の対象)とされるのは下記3つの観点から判断されます。

(1)不当な利益を得る目的や、著作権者を害する意図があるもの
(2)原作をそのまま利用する侵害行為であること
(3)著作権者が得るはずであった利益が不当に害されること

YouTubeに演奏や弾き語りなどのコンテンツを公開することはこれに該当しません。

もちろんオリジナルであるように誤認を与え、本来著作権者が得るはずであった利益を不当に侵害するようなコピーは非親告罪となり、著作権者の告訴なく1発アウトとなります。

ですので、YouTubeでの演奏や弾き語りは法律的にはアウト!ではなく、グレー(オフホワイトという言い方もあった気がしますが…)となります。

  • もちろん、パブリックドメイン(著作者の死後70年以上経過しているクラシック曲など)となっているものは、そもそも認められているのでOKです。
YouTubeにおける演奏や弾き語りコンテンツの取り扱い

商用音源の完全なコピーや転載コンテンツは当然取り締まりの対象になって、動画は削除されますし、チャンネルにもペナルティが課せられます。では、演奏や弾き語りコンテンツなど「グレー」なものをYouTubeとしてはどう扱っているのでしょうか。

それは、著作権者の意向に合わせます!というスタンスです。

ですので、YouTube上で著作物の管理をしたいと思うパートナー(著作権者とその代理人)に対して、コンテンツID呼ばれるシステムを用意しています。

このシステムに著作物(音声と映像、またはその両方)を登録しておき、YouTubeにすでにアップロードされている動画と今後公開される予定のアップロード動画の中から、合致するものを検出します。

検出は、そのままコピー・転載しているものだけでなく、メロディとして演奏しているもの、アカペラで歌っているもの、等も検出できる精度を持っています。

そうして検出した動画に対して、著作権者(とその代理人)は以下のような対応(申し立て)をとることができます。

  • 公開しても良くて、クリエイターは収益も得て良いです
  • 公開しても良くて、クリエイターは収益も得て良いですが、著作権者との収益按分(シェア)となります
  • 公開しても良いけど、クリエイターは収益を得てはダメです
  • 公開しても良いけど、収益は満額著作権者がいただきます
  • 公開してはいけません、動画は非公開(ブロック)になります
  • 公開してはいけません、そして悪質な著作権違反とみなし動画を強制的に削除しますので、ペナルティが課せられます

もちろんクリエイター側に「リーズナブル」な理由があれば、その対応に異議申し立てをする仕組みも付与されており、YouTubeとしてはこのシステムの中で、あくまでも当事者間で解決してほしい、というのが基本スタンスです。

ちなみに、今回テーマになっている演奏や弾き語りコンテンツに関して言うと、
私の経験上では1~4のケースがほとんどで、数年前に日本のポップスの大ヒット楽曲で、認められた期限を過ぎると5というケースはレアケースとしてありました。

声を大にして言いたいのが、6.というケースはよっぽどの悪意がなければ無い!ということです。
万が一、あったとしても5なのでリスクが無いのです。

ですので、演奏や弾き語りコンテンツを公開する際の心構えとしては、

  • 公開はできるし、まずはそれでOK。視聴者(登録者、ファン)に楽しんでもらえれば!
  • 収益化はできたら嬉しいけど、仮にそうでなくても新規の視聴者(登録者)が増えるかも!
  • 動画が公開できていれば基本OK(収益化できないなどの通知があっても大丈夫)

というものです。

真面目な方であればあるほど「収益化できません!」などの通知がくると、悪いことしてしまったのかも…など不安に思うかもしれませんが、その動画が公開状態を維持しているのであれば、まず大丈夫です。音楽系YouTubeチャンネルの「あるある」だと思っていただいて結構です。

とはいえ、今回は基本的な考え方を簡単に説明させていただいたに過ぎませんので、
さらに詳しく知りたい!という方は以下のヘルプページでご確認ください。

YouTube:著作権と著作権管理

異議申し立てをしたほうが良いケース

この記事を読んでいらっしゃる方はクラシックピアニストの方が多いと思いますので、
異議申し立てをしても良いリーズナブルな理由について最後に触れさせていただきます。

上記4のパターンが多いのですが、本来であればPD(パブリックドメイン)として認められているクラシック楽曲であるにも関わらず、著作権者から申し立てを受け、4のパターンになってしまっている、という場合です。

著作権者は、そもそも何を守るためにYouTube上での著作権管理を行っているでしょうか。
主な理由はCD音源などが勝手にYouTubeで利用されては困る!というものです。

そのためにコンテンツIDを使ってコンテンツのパトロールを行うわけですが、クラシック音楽の場合は同じ曲を多くの人が演奏することが特徴ですので、コンテンツIDが誤って「同じ音源」として検出してしまう、のが上記の事態というわけです。

著作権者は毎日膨大な数がアップロードされるYouTube動画を一本一本見て判断するわけにはいきませんから、自動的に1~6の対応(正確にはポリシーという言い方をします)をします。そのために不都合が生まれてきてしまう、ということです。

このような場合には、ぜひ異議申し立てをしてください。

  • 対象となっている曲は間違いなくパブリックドメインである
  • その楽曲を自分がピアノで演奏している。
  • もしくは演奏者の利用許諾を得て動画をアップロードしている

という旨を、理由に記述しましょう。

著作権者の利益も、クリエイターの利益もどちらも最大化させ、視聴者に価値を提供し続けることを目指すYouTubeです。

楽器演奏者(弾き語りを含む)の皆様は、ぜひ安心してご利用いただければと思います。