第30回 マズルカ第31番(3つのマズルカ Op.50 第2曲 変イ長調)

第30回 マズルカ第31番
3つのマズルカ Op.50 第2曲 変イ長調
| 〔序奏〕 | 1~8小節 |
| 〔A〕 | クーヤヴィアク a 9~28小節 変イ長調 b 29~39小節 ヘ短調 a 40~59小節 |
| 〔B〕 | マズール a 60~67小節 変ニ長調 b 68~75小節 変ロ短調 a 76~83小節 |
| 〔A´〕 | クーヤヴィアク a 84~103小節 変イ長調 |
31~32歳のショパンがノアンの地に満足するため息、また10代~20代前半の頃を懐かしむ姿、とでも言いましょうか。溌剌とした第1曲に対し、第2曲は初老の雰囲気さえ漂う穏やかなマズルカです。
きれいな3部形式の楽譜で注目すべき点は音程。上声が属音のEs音から2度、3度、5度、7度と開いていく序奏は、まるで花が自らの花弁をゆっくりと広げていくかのようです。続くメロディー〔A〕は順次進行が主体となりますが、上品さの中にもショパンのこだわりが感じられるのがやはり音程です。マズルカのアクセントとなる2~3拍目に2度と3度の音程が意識的に使われています。(9小節目のEs~F、そのヴァリエーションとなる17小節目のEs~G、冒頭2小節のモチーフとリンクさせています。この3つの音が曲のあちこちに顔を出します。)
〔B〕の24小節間は、終始一貫して「タンッタタンタン」のリズムが使われています。メロディーはここでも2度と3度の音程が中心となっていますが、弱音(P)の中で弾むようなリズムと対照的な性格を同居させて不思議な緊張感を生み出しています。内に秘めた喜び、自分だけが知る小さな幸せ、という表現が適当かわかりませんが、ショパンにとって幸福感というのは声を大にして誰かに伝えるものではなく大事にしまっておきたいものなのだ、と筆者は感じてしまうのです。

