ピティナ調査・研究

第24回 マズルカ第25番(4つのマズルカ Op.33より 第4曲 ロ短調)

マズルカを味わう
第24回 マズルカ第25番
4つのマズルカ Op.33
第4曲 ロ短調

ショパンの全マズルカ中最大の224小節を持つ作品です。ショパン本人が「この曲はバラードの一種であると理解してほしい」と、大胆に展開していくその物語性を大事にするよう弟子たちに告げていたと言います。

〔A〕1~48小節 マズール、オベレク
〔B〕49~64小節 マズール
上記繰り返し 65-128小節
〔C-1〕129~160小節 クーヤヴィアク
〔C-2〕161~192小節 マズール
〔A〕193~216小節 マズール、オベレク
〔コーダ〕217~224小節

始まり〔A〕は哀しく(Mesto)歌うマズールのリズムの旋律です。2拍目の非和声音を印象的なトリルで飾りクーヤヴィアクの雰囲気をも持たせるところは、ショパンの得意とする書法と言えます。すぐに嬰へ短調に転じホルンが何かを告げるような響きが現れたり、ハ長調に転じてチェロがぼそぼそとつぶやくようなオベレクが現れたりと、断片を即興的に繋げるように進みます(シューマン的、あるいはゲーテの言う「病的」と表現される部分でしょう)。これを再び繰り返すと、突然半音下の変ロ長調の調号に替わって激しいマズールが現れます。長調と短調を行き来するような和声進行(準固有和音の頻出)によって、ショパン自身の心の葛藤や焦燥感はスフォルツァンドのFes音(変イ長調の属9=60小節目)で最高潮に達するのです。

続く〔C-1〕では天国的なロ長調に。色とりどりのハーモニーと共に、憧れと切なさに満ちたクーヤヴィアクのメロディーが続きます。そしてショパンは自らの霊感によって導いたその幻想的世界で、縦横無尽に華やかなマズールを踊り始めます〔C-2〕。このマズルカが作曲されたころ、ショパンはサンドと衝撃的に出会いました。彼は、二人の芸術家としての創造が充実し、調和して行くことを強く願っていたと思います。176小節からの急激なピアニッシモは、霞の向こうで踊る2人の姿をこちら側から見ているような不思議な感覚がします。

コーダもまたミステリアスです。これについてのショパンは、弟子のレンツに次のように伝えています。
『「ソ-ド-ソ-ド-ソ」と次々に小さな鐘の音が鳴り、突如として最後の和音が響き渡り、亡霊たちはかき消えてしまう。』
虚しさと冷酷さとを湛え現実に帰る彼の姿は、哀しくもあり、力強くもあります。強弱の書かれていないコーダの弾き方に、ピアニストの個性を見ることができるでしょう。

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