ピティナ調査・研究

第18回 マズルカ第19番(4つのマズルカ Op.30より 第2曲 ロ短調)

マズルカを味わう
第18回 マズルカ第19番 ロ短調
4つのマズルカ Op.30 第2曲 ロ短調

憂鬱でやるせない思いを吐露しているようなクーヤヴィアク。しかし、第1曲とは違いリズミカルで生き生きとしています。形式とモチーフはシンプルですが、最後は属調の嬰へ短調で終わるという情熱的でユニークな作品です。

音階の下行形をモチーフにしたテーマが2小節ごとに調性と強弱を変えながら繰り返されます。装飾音やアクセントなどリズムにヴァリエーションを加えて、最初の16小節間で踊りの推進力と作品全体の持つパワーの大きさが示されています。その後、踊りは最も魅惑的で情熱的な場面に移ります(17~32小節)。恋に苦しみ、音楽に一喜一憂し、祖国を思えば辛く、やりきれない思いはつのるばかり...旋律と和声が旋回しながら展開し熱を帯びていく様は、ショパンの心の裡に潜む悲哀のマグマがふつふつと湧き上がってくるような緊張感を演出しています。上り詰めた先の和声は属調の嬰へ短調、常軌を逸しています。しかし決してめちゃくちゃに荒れ狂うのではなく、このように心理的なプロセスを描く際にも彼の緻密な音選びがあり、私たちの胸を打つ完璧な響きとなっているのです。

そして今度は、ショパンの変わることのないマリアへの愛しい思いが垣間見える場面がやってきます(33~48小節)。同じ旋律を繰り返す右手の下で左手の和声進行が浮き彫りになり、その純粋な響きの美しさに彼の彼女を見つめる目を感じることができるように思います。それらはイ長調に納まるシンプルなものですが、それによってまったく変わることのない8回の旋律が様々な表情に満ちて対話しているように聞こえてきます。しかし、もう彼女に会うことはない...再び熱い感情が渦巻いて最高音のFisに向かって飛び散り、曲は終わります。

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