ピティナ調査・研究

第17回 マズルカ第18番(4つのマズルカ Op.30より 第1曲 ハ短調)

マズルカを味わう
第17回 マズルカ第18番 ハ短調
4つのマズルカ Op.30

1834~35年にかけて作曲され、1835年に出版。ペルトゥイ伯爵に献呈。
この頃ショパンはパリやドイツ各地で演奏会に登場したり(この後しばらく公の場には出ません)、メンデルスゾーンやベッリーニ、シューマンやクララ・ヴィークに出会ったりと充実した活動をしていました。しかし彼の心は祖国に対する愛惜の思いでいつもかき乱されていたのです。ただならぬ情勢を嘆き、憤り、遠い異国の地で祈ることしかできないことに辛く苦しむ...この作品は同じ頃に書かれたOp.26の2曲のポロネーズと同様、祖国に向けられたショパンの悲痛な叫びが聴こえてくる作品です。

第1曲 ハ短調

様々な人との再会の旅にはメンデルスゾーンとシューマンとの刺激的な交流もありました。ショパンの演奏(バラード第1番、ノクターンやマズルカの新曲)を聴いた彼らは友人への手紙でその才能を絶賛しています。この時期彼はこうして音楽家として生きる励ましを得た一方で、尊敬してやまないオペラ作曲家ベッリーニの訃報に落胆しています。精神的なショックに旅の疲れが重なり体調を崩していたショパン。この作品の冒頭、儚げなクーヤヴィアクのテーマは空虚5度の伴奏に乗って力なく歌う彼の声そのもののように聞こえます。
構成はシンプルなA-B-Aの3部形式です。自問自答を繰り返すような憂鬱なクーヤヴィアク、変ホ長調に転じcon anima(生き生きと)と示されたマズールでは音が跳躍し始めます。しかし華やかさはなく、まるでショパン自身が束ねて封じてしまったマリアとの幸せな時間を思い出しているかのようです。その後、ハ短調のドミナント(属音)と半音程が影を落としながらクーヤヴィアクの再現へと導いていきます。再現の直前にはこの作品の最高音であるAsが静かな嘆きとなって現れます。作品全体の音域の狭さをここに感じ、すぐに心を閉ざしてしてしまう彼の性格を象徴しているような印象的な場面です。最高音はコーダでも2度現れますが、何かを請うようなかすれたその声は最後まで誰にも受け入れられることなく空に放たれたまま...ショパンの孤独を受け止めた当時のプレイエルの音色は、哀しくも美しく響いたのに違いありません。

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