第14回 マズルカ第15番(4つのマズルカ Op.24より 第2曲ハ長調)

第2曲ではオベレク、クーヤヴィアク、マズール、3つの踊りを自然な音楽の流れの中で聴くことができます。Op.24が作曲出版された1835年には、ショパンにとって最後となった両親との再会の機会が訪れています。温泉地で1ヶ月近くを共に過ごしたことを綴った3人の手紙にも現れているように、故郷のその時間が本当に幸せであったことが伝わってくる楽しい作品です。 一瞬にして霧がかった夢想の世界に惹きこむショパンのテクニック。ハ長調なのにどこか怪しく民族的な響きがするこの4小節の序奏にはやはり空虚5度が使われています。ここではI度とV度が禁則的に連続しており、それによって生まれる低音の4度音程(G-D、C-G)はこの作品全体の鍵となっています。5度の展開音程であるこの4度音程には「ドミナント(V)がトニック(I)に解決する」という確信的な性格があり、ショパンは第3音が欠けた空虚5度の不安定さとは正反対の性格であることを意識しながら用いていたのかもしれません。
イ短調かハ長調か、空をさまようようなハーモニーに乗って始まるのは生き生きとしたオベレク。滑り降りる音階はすばやい回転を、アクセントを持つ和音の連続はつま先や踵で音を立てて踏むステップを現す、といった具合でしょうか。その後21小節から登場するのは、儚げなリディア旋法を用いたクーヤヴィアクのリズムです。そのメロディーは4度の音程をたくさん含みながら下線4本上のA音までしなやかに昇っていきます。4度はベース音にも(F-H、C-F)登場しますが、増音程を含むことでエキゾティックな香りが漂います。そしてナポリ調である変ニ長調に突如、しかしこの上なく滑らかに転調し、3つ目の踊りであるマズールが軽やかに舞い始めます。後半には左手にメロディーが移り(変ホ短調!)、それはまるでチェリストが弓とヴィブラートをめいっぱい使ってむせび泣く歌を聞かせているかのようです。ここで何度も現れるF-Cesの増4度音程は聴く者の胸を強く打ちます。ショパン得意のエンハーモニック(異名同音)を経て緊張が緩むと再びオベレクに戻り、音は序奏の霧の中へと消えていきます。
短いながらも、ショパンの音楽的エッセンスが色彩豊かに散りばめられた逸品です。
Op.24ではテンポについて興味深い表示があります。
「時は今直最上の批評家であり、忍耐は最良の師である」―ショパン
第1曲 Lento
=108
第2曲 Allegro non troppo
=108
数字的には同じでもリズムや伴奏形、調性によって感じるテンポに違いが生じることは、演奏家が常日頃感じていることだと思います。ショパンが書いた数字のテンポ(=メトロノーム表記)と音楽的に体内で感じていたテンポ(=イタリア語表記)を見て、ピアニストであった彼の感性に触れることもできるような気がします。
ちなみにメトロノーム表示が書かれているのはこのOp.24まで。Op.30以降はイタリア語表記のみになります。

