ピティナ調査・研究

第9回 マズルカ第10番(4つのマズルカ Op.17より 第1曲 変ロ長調)

マズルカを味わう
第9回 マズルカ第10番 変ロ長調 op.17-1
4つのマズルカ Op.17

1832~33年作曲。1833年出版。リーナ・フレッパ夫人に献呈。 1831年秋、パリに到着したショパンは、この美しい世界を見渡せる住まい、社交界への出入り、第一級の音楽的環境に満足し、「ここに3年の間は滞在したい」と友人に宛てて手紙を書いています。このマズルカは、パリに住むポーランドの上層の人々であるポトツカ伯夫人、チャルトリスキ公、プラテール伯、グジマワやピアニストのカルクブレンナーとの交流が深まり、実質のある音楽活動がくりひろげられていた頃の作品です。書きためていたOp.6とOp.7のマズルカがこの好調な時期に出版刊行されたそうですが、故郷の純朴な香り漂うそれらに比べて、Op.17には都会にいることで洗練された青年の姿が映し出されてはいないでしょうか。

第1曲 変ロ長調

ショパンにとって大作曲家とはオペラを手がける音楽家のことでした。彼がパリでの生活を綴った手紙には、ロッシーニが主催していたイタリア・オペラ座やマイアベーアのパリ・オペラ座などのあらゆる公演を見てとても感動し、総合芸術であるその魅力に理解を深めたこと、ゆえに、自分が高度なオペラの領域ではなくピアニストとして道を切り開いていくことを確信したと書かれています。ここでは望むことのすべてがあり、それぞれが自分のやり方で何でもできる。第1曲目は、そのことを肌で感じ、希望に向かって決意したかのような生気あふれるマズールです。 シンプルな中にもコントラストがくっきりと描かれたA-B-Aの3部形式。Aの部分(40小節間)では、充実したパリでの生活が一貫したリズムに現れています。和音の連続も非常に華やかです。ヘミオラ的な伴奏に誘われる変ホ長調の中間部。メロディーは空を軽やかに舞うように、透明で繊細に響いていきます。半音階をなぞるトリルは印象的で、まるで天上から星がこぼれ落ちるかのようです。

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