ピティナ調査・研究

第6回 マズルカ第6番(5つのマズルカ Op.7より 第2曲 イ短調)

マズルカを味わう
第6回 マズルカ第6番 イ短調 Op.7-2
5つのマズルカ 第2曲 イ短調

Op.7が作曲されたのは、20歳のショパンが祖国を離れウィーン、ミュンヘン、シュトゥッツガルトを経由しパリへ向かった頃。反乱の末ワルシャワがロシア軍の手に陥落したという知らせ、異国の地でも思いを寄せ続けたコンスタンチアへの失恋・・・「生まれなかったほうがよかった」と孤独に苛まれ『革命のエチュードOp.10-12』『スケルツォ第1番Op.20』を作曲しています。しかし悲劇の渦中で「頭の中が陰鬱なハーモニーでいっぱいだった」はずの人が、親密な愛情あふれる作品をも遺し得たことに、感動せずにはいられません。

第2曲では、疲れて肩を落とし、窓の外に遠く祖国を見つめるショパンの姿を見ることができないでしょうか。順次進行を主体にしたイ短調の静かなクーヤヴィアク(A-A´の2部形式)には、彼のため息が幾度となく聞こえてきます。右手のメロディーにはもちろん、それを支える左手にも。そして、その足取りは決して軽くありません。1拍目はいつも空白、2、3拍目に和音がトントンと置かれ、踊りというよりも魂が浮遊しているかのような、非現実的な雰囲気に誘われます。サブドミナントの和音で始まる1フレーズ目のメロディーは「F(ファ)」にこだわり、4小節かけて「E(ミ)」「D(レ)」「C(ド)」まで、左手和音の上声部(親指が受け持つ)と共にため息となって落ちてきます。5?8小節目ではメロディーが上行、跳躍、音量も増して雰囲気が一変。strettoはショパンの狂気の横顔がのぞく一瞬のような気がします。次の8小節ではナポリ調(変ロ長調)やフェルマータを含み、力なくフレーズを閉じます。続く A´は、両手に半音階や9の和音を多用した、ショパンらしい響きにあふれた部分です。そこには減7度や6度の広い音程を持つため息が連続し、どこにもぶつけることのできない彼の苦しみを胸の内から搾り出しているかのように思えてなりません。

イ長調に転ずると、ようやくリズミカルな空気が流れ始めます。そのステップはしなやかなdolceの後ユニゾンで本来の力強いマズールとなります。左手の見事なフレージングによりショパンの凍りついた心は徐々に解けていき、祖国の血が沸き立つ。彼はここが自分を取り戻せる場所、憩える場所、魂であることを私たちに訴えているのです。
1人ピアノに向かい、自分の気持ちを語りかけ音と対話する青年ショパン、ある日の日記。正に音のエッセイです。

筆者の演奏は、指示されたテンポ表示Vivo(生き生きと)?=160よりも遅めになってしまいました。今回はma non troppo (しかし速すぎず)を大事にさせていただきました。毎回苦労しているテンポについても、いつか書かせていただきたいと思っております。

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