シンフォニア第11番
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石井なをみ
この曲はポリフォニックというよりも、ハーモニックな要素が強い作品だと思います。模倣技法は短い動機によるものが見られるだけです。
大半の部分は1小節1つの和音で作られている音楽です。和声進行の作るフレーズを考えて、メランコリーな表情が表現出来るといいですね。
上田泰史
第11番ト短調は、リュート風の分散和音によるモチーフで全体が統一されており、旋律は叙情的な歌唱様式で書かれています。主題は、繋留音と下行旋律が作り出すいくぶん陰鬱な情緒が特徴的です。
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冒頭を見てみましょう。オレンジ色の◯で囲んだ上声部の音は、ニ度ずつ、長いため息のように中音域へと順次下行していきます。その間、中声部は上声部に対する繋留音を生じ、上声部とニ度でぶつかります。しかし、これはすぐに三度に解決して緊張と弛緩が交代していきます。
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繋留音の効果的な使用で思い出されるのは、バッハより25歳年下のジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージの絶筆となった《スターバト・マーテル》(1736年作)の冒頭です。
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磔刑に処されるキリストのもとに佇む聖母マリアの深い悲しみと心痛が、繋留音による音楽的緊張によって強められています。シンフォニア第10番の主題は、上声部のカタバシスと繋留音の効果から、沈下していく情緒表現と見ることができます。
Giovanni Battista Pergolesi - Stabat Mater (Philippe Jaroussky, Emöke Barath, Orfeo 55)
均整のとれた16小節(8小節+8小節)の第1部が変ロ長調で終わると、第17小節から主要モチーフが中声部と上声部に交互に配置されゼクエンツを形づくります。
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このゼクエンツでは、すべての声部が順次下行しています(上声部はBからDまで、中声部はFからCisまで、下声部はGからEまで)。ニ短調へと移り、第24小節からはV度のペダル音が次の区切りを予感させます。期待通り、和声はニ長調のIに落ち着き、冒頭主題の音型が現れますが、ここで一工夫が見られます。
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ニ短調で主題が回帰するかと思わせておいて、すぐさま冒頭の第3・4小節と同じ変ロ長調による繋留のパターンが現れ、すぐにまたニ短調に戻って再度、和声的に終止します。
第36小節から始まる第3部は、下声部、上声部、中声部の順にゼクエンツが立て続けに現れ経過的な役割を果たしていますが、単なる埋草的なゼクエンツではありません。第41小節で上声部はこの曲で一番高いCに到達し、これを頂点としてアーチを描きます。第36小節では下声部が深いニ短調のI度を低音域で響かせますが、音域を押し上ながら変ロ長調に転じ、悲しみの情緒が和らぎます。
第48小節から、再び第2部冒頭(第17小節)と同様の順次下行ゼクエンツが始まり、第58小節から、今度は主調であるト短調のV度のペダル音が楽曲の終結を予期させます。コーダには、冒頭の主題が用いられ、最終的に再び悲哀の情念へと回帰します。しかし、冒頭と同じ主題ながら、ここではいろいろな解釈が考えられるでしょう。例えばグレン・グールドの録音(1964年リリース)では、冒頭主題よりもテンポをかなり落とし、打ちひしがれたように終わっています。この楽曲の演奏解釈を考える上で、複数のピアニストによるコーダの表現を比較してみるのも面白いでしょう。
橋本彩
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短調は、自然短音階の5番目の音の上に三和音を作ると、短三和音になります。
主調の長い属音保続を経て、第65小節で最初のテーマに戻ってきます。
属七の和音(レファ#ラド)にミ♭が追加されています。
山中麻鈴
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- 楽譜は一例です