シンフォニア第13番
石井なをみ
この曲は8分の3拍子で、4分音符と8分音符の組み合わせによるリズムが多用されています。単に音が並んでいるような、平坦な演奏にならないように気をつけましょう。音価によるリズムの重軽を考えて弾いていただきたいです。
上田泰史
第13番は短調ですが、この曲には(例えば第9番のような)悲痛な情念はそれほど喚起されません。その理由は、いくつかあります。まず、主題がとても単純だということです。冒頭の主題(a-f-c-d-c-h-a)は、八分音符と四分音符だけでできており、順次進行で4度上行し、4度下行するだけで、訴えかけるようなエクスクラマツィオ(6度上行)や、減五度を伴う旋律の動きは見られません。もう一つはリズムの多様性で、対位句の16分音符や、シンコペーションと32分音符を含むモチーフのリズムが楽曲にいきいきとした動きを与えています。このように、リズムの分割が次第に細かくなり、リズムが多様化していくところにこの曲の活気の鍵になっています。
第13番は、第10番とは対照的に短調でありながら、曲の出だしの書き方や反復進行の使用という点で、曲の作りが似ています。冒頭、バスによって伴奏されるフーガ風の主題(イ短調=主調)が上声部で提示され、これに応じる主題(応唱、ホ短調=属調)が中声部で答えます。そして上2声が高い音域から、天から舞い降りるように下行し、その後に下声部に主唱が出ます(第13小節)。主題が16分音符でできている第10番と異なるのは、16分音符で絶えず動くパッセージが対位句として置かれている点です。対位句とは、主題とともに別の声部で奏でられる旋律で、フーガのように厳格な対位法的規則によって書かれている場合には対主題と呼びますが、ここではそうでないので対位句と呼びます。
対位句は2種類あります(形式図中の対1、対2)。それぞれの特徴を見てみましょう。対位句1:順次進行でアーチ型に上行し下行するモチーフ。対位句2:1オクターヴの分散和音によるモチーフ(c-e-g-c-h)で、シンコペーションが用いられる(第21小節~)。ハ長調で出てくるので、たいへん明るく生き生きとした活気が生まれます。第21小節からちょうど第2部が始まりますが、その直前の4小節間、下声部から最上声部に至るまで、ト長調の音階が一気に上行している点に注目しましょう。上行のフィグーラ(アナバシス)の直後にハ長調の対位句2が来るので、活気があり喜ばしい感じがするのです。それに、第2部では上2は仲睦まじく、主題が並行進行により奏でられます。
さらに活気をもたらすのは第35小節から登場する32分音符を含む音型です(図中の模3)。最上声と下2声がこの音型を互いに模倣し(第36~40小節)、今度は下2声部の親密さが強調されます。
第41小節から始まる第3部では、対位句2(第41~54小節)と模倣句3(56~63小節)が順に活用されるので、イ短調の陰り(特に第58~59小節下声部の下行半音階=カタバシス)を含ませながらも活気が保たれます。最後の長三和音も、この曲にどこか幸福な印象を残します。
橋本彩
山中麻鈴
- 楽譜は一例です