第31回 国府 弘子さん
◆国府弘子オフィシャルホームページ
意外な一面。
コンサートには必ずお供する、「シロト」くんだよ!
前回は2009年にお越しいただきましたが、この間に、ご自身の闘病や大切な方との別れなど、いろんな経験をされたそうですね。
ええ。2009年秋といえば・・・実は、乳がんということがわかり、これから手術を受けるという頃でしたね。さすがにお会いしてすぐにそういう話は出来ませんでしたが、まだ手術前だから痛くも痒くもないとはいえ、薬の副作用がどーんときて精神的にもちょっとしんどかったかな・・・もしかしてご迷惑おかけしたんじゃないかと心配してました。あれからもう5年以上経ったんですね。
手術後のコンサートにも伺ったことがありますが、まだお辛そうな様子も少し感じられたりで、陰ながら応援しておりました。今はすっかりお元気になられて安心しましたが、このスランプをどう乗り越えられたのでしょうか?
乗り越えたというよりも、その状況をただただ味わった、そしたら復活期が来た、と いう感じですね。身体はさっさと手術して解決したつもりでも、治療の影響で、精神的になんだかとってもヘビーな時期が1年ありました。でも、その時期に「人に頼る」ことも 覚えました。これはバンドの基本ですから、災い転じて福と成す、と(笑)。
なるほど(笑)。そういった経験を踏まえて、今年1月には、「ピアノ一丁!」をリリースされたそうですね。
私(国府弘子)名義としては8年ぶり、通算22枚目となりますが、自分がクラシックもジャズもひっくるめて、「ピアノでどれだけ幸せになれるか」、そのために忘れちゃいけないものを全部思い出して、入れてみたんです。そしてこのアルバムは、"極上のピアノの音色"にこだわり抜き、銀座ヤマハホール・CFXで録音した、完全ソロピアノ作品なんですよ。
ろくろ首みたいに首が長ければ(笑)、ピアノに首を突っ込んでピアノの向こうの音色をもっとよく聴きたい!っていつも思いながら弾いているんですが、ヤマハホールは本当に極上の響きで、幸せなひとときでした。
確かに、CDの最初の1音を聴いただけで、すっと癒されるのを感じました。
うちの生徒からも、「今国府さんのCDを聴いてます!2曲目のイントロを聴いた瞬間、涙が出てきました。この曲絶対に弾きたいです!」と、早朝に感激メールが来たほどです。
それはうれしいですね。
2曲目の「ユー・チューン・マイ・ハート」は、長年お世話になったピアノ調律師さん、そして私の心の調律もしてくださった、天国の小沼則仁さんに感謝をこめて捧げた曲なんです。特別な思いを持って聴いてくださる方が多いようですね。 タイトル曲「ピアノ一丁!」は、なんというか、日々のいろんな苦労もありつつ、「きっと明日も、いいこといっぱい待ってるよ!」とピアノでエールを送る、そんな気持ちで作った曲です。
タイトル曲は、特にバックにベースとドラムが聴こえてくるようでしたよ。
それもうれしいですね。楽譜があるからといって、そのまま弾くんじゃなくて、そこにベースやドラムの音を想像して欲しい、という気持ちで書いたんですよ。
あとは、半分くらいはオリジナルですが、自分が病気をしてちょっとしょんぼりしていた時期に書いた「ピアノテラピー」は、"副作用のない薬"みたいな気持ちで聴いて(弾いて)いただけたらうれしいなと思います。
それから最後のデザートは、まさかの寅さん、まさかのピアニカソロなんです。でも実はちゃんと、ピアノ(CFX)も参加しているのですよ。調律師さんとのヒミツの共同作業により、かすかな残響音が生きてるので、耳を澄ませて聴いてみてください。
ともかく、このアルバムの「幸せになれるピアノの音色」を、体感していただければありがたいです!
そして今春、待望のマッチングの曲集も発売されましたね。 その発売記念コンサート(6/27銀座ヤマハホール)もサイコーでした!2部は殆ど即興でしたよね。会場からのリクエスト大会となりましたが、「ビートルズナンバーで」と国府さんが言ってるのに、全然違う曲ばかりのリクエスト(笑)。なのに、それはそれは見事な、即興とは思えない素敵な演奏で感服しました。
ワガママな(笑)お客さまのリクエストをとことん楽しませてもらいましたが、例えば「ピアニカを吹きながらピアノを弾く」という荒技あり、それからなんと、客席にいらして下さっていた八神純子さんの大ヒット曲「みずいろの雨」をピアノソロで弾くハメにもなったり。
いろんな汗もたくさんかきつつ(笑)、ともかく、このコンサートで思い知ったことは、ソロでも決して独りぼっちなんかではない!!ということです。そして、極上のお客様に支えられ、極上のホールを自由気ままなライブハウスにしてしまう、という、私の描く理想の「ピアノコンサート」となったのでした。
国府さんは教育的な活動も長年されていて、4年前から始められた「相模湖ワークショップ」も画期的な試みですね。
相模湖交流センターでのコンサートがきっかけとなり、同じ会場でワークショップもできないかと考えて、自主的に企画したのが始まりです。参加は、レベルも年代も全く問わないので、それこそいろいろな方がいらっしゃいますが、私が一番気をつけているのは、「参加した全員を置いてきぼりにしない」ということですね。
自分も幼少の頃、決して積極的な子どもではなかったので、このワークショップに泊まりがけで参加するという勇気たるや、すごいことですよね。初日はまず、私たちトリオのコンサートを鑑賞してもらい、その夜に顔合わせの食事会。翌日は一日中音楽三昧!タイコでおしゃべりする岩瀬立飛さんのまわりには、子どもからご高齢の方までドラム希望者がいっぱい。別の部屋では、私のピアノを囲んで、ピアノやピアニカ、ほかのいろいろな楽器奏者と課題曲の練習をします。ここでは、なるべく楽譜を使わないで、目で見て、耳で聴いて覚えてもらう方式で進めます。つまり、聴く耳を持つこと!これはバンドの基本でもある上に、実はコミュニケーションの大事な基本でもあります。たった2日間で、急にピアノや太鼓が上手になるわけではないけれど、この合宿におそるおそる参加した人が、帰る時にはみんな笑顔いっぱいで、音楽がますます好き!になっているのを見るのが、私は大好きです。
それは素晴らしい企画ですね。実はピティナでも「アレンジワークショップ」を昨年から開催しているのですが、何かやらされるかも?と思うとしり込みする方が多くないですか?
今回4回目にして、今まで全く興味を示さなかったような方からのお問い合わせも多いんですよ。きっと扉を開ける勇気が出たんでしょうね。 「音楽を楽しむために、誰かを音楽で喜ばせるために、完璧である必要はない」ですよね。そして、たとえ楽器が演奏できなくでも、歌やかけ声だけでもちゃんと幸せになれる。そこにピアノがなくても、楽譜がなくても、音楽はできるんです。「たまたまピアノを弾いているんだっ」てことですよね。
そのとおりですね。"その場であるもので音楽できる力"、これが大事ですね。
音大も変わらないといけないと思いますが、「英雄ポロネーズ」が弾けるのに、現場で応用が利かないというのはもったいないことだと思います。
そして、皆さんには、"欲張る"ことをすすめたいですね。長年「あれっ、私ってクラシックも中途半端だし、ジャズも難しくて・・・どっちも無理かも」と、20年以上思っていたのですが、この年になってみて初めて、「どちらも一生懸命やっていて良かったんだ」「いろんなことが全て無駄にはなってないんだ」と、心底思えますね。
なので、クラシックしかやってない方には"ポピュラー"を、バンドしかやってない方には"クラシック"をおすすめします。ピアノを弾かなくても、聴くだけでも最初はよいのですから。
では、その第一歩を踏み出すために、ステップ課題曲「キャラバン」(発展4)
(特に「C」からのアドリブ例など)について、アドバイスをよろしくお願いいたします。
この曲は、非西洋の音階を取り入れたメロディーと激しいリズムが特徴で、アフロキューバンの代表曲といわれていますが、かのベンチャーズのお約束のレパートリーとしても有名ですね。
皆さんも一度は耳にしたことがあるのでは?と思います。
冒頭の16小節はまずとにかくゆっくり自由なテンポで、ドギャーンと怪しい雰囲気をぶちかまして欲しいです。「A」からはテンポアップ。ラテンの安定したグルーブ感がどのくらい左手でキープできるかがキメ手です。まずは左手だけでこのベースパターンを延々と30時間くらい(!)練習してみましょう。「C」からはスィングのリズムで。楽譜に書いてあるアドリブ例は、ビパップの有名なブルース曲のフレーズをわざと持ってきてるんですが、そういう遊びも楽しいですよ、という提案です。 では、"自分で音をチョイスする"ための初めの一歩について、演奏しながらお話してみますね。
苦労は多いけど、レパートリーになったあかつきには、かなり演奏映えする曲なので ぜひがんばってみて!
ありがとうございました。以前課題曲に指定されていた、国府さんアレンジのスタンダードナンバーが、この度ぷりんと楽譜で復活したのもうれしいですね。
ありがとうございます。スタンダードって古くならないですものね。著作権等の問題がないものは、その当時のままの譜面で復活しましたので、ぜひ弾いてみてくださいね。
本日はお忙しいところどうもありがとうございました。今後のご活躍をお祈りするとともに、ぜひ今後、ピティナの会員に向けても、お話(演奏)していただく機会が来ることを願っております。