第24回 轟 千尋さん
主な著作物:【楽譜】「きらきらピアノシリーズ」全8巻、「みんなで連弾 ハッピー☆クリスマス」ほか(以上全音楽譜出版社)、「ぴあのでものがたり」(音楽之友社)、「ちいさなおんがくかい」(学研)、「おつきさまのはなし」(カワイ出版)ほか。【雑誌】 ムジカノーヴァ(音楽之友社)連載中。【CD】「EL DORADO」「BASARA」「KIYARI」TSUKEMEN 、「ラプソディ・ イン・ホルン」福川伸陽(キングレコード)ほか。
小学生の頃はマーチングバンドでパーカッション担当。中3~高校の頃はエレキベースにハマッていたんですって!
作曲の方面に進もうと決めたのはいつ頃ですか?
3才からピアノを始めましたが、幼い頃からひとつの曲にいろいろな和音をつけて遊ぶのがすごく好きでした。中3のときに、体育の時間に柔道で背負い投げを受けて鎖骨を折ってしまったんです。治療の間ピアノが弾けなかった時に、曲を書くのも楽しいかも、とその方面に興味が向いたのですが...思い立っても先生の探し方もわからない。そこで芸大の教務部に相談して、掲示板に「私に作曲を教えてください!」という手紙を貼ってもらったんです(笑)。それがきっかけで芸大の学生さんに教わることになり、その後何人か先生を紹介していただきながら、受験の半年前にはまさに出会いたかったような先生に師事することができました。そこからが本当の作曲の勉強の始まりといえます。
芸大の作曲科となると、相当ハードな道のりだったのでは?
「9割の人は和声で挫折しますよ」と最初に言われました。とにかく夢中で、とりつかれたように勉強して合格することはできましたが、入学してみると、もう調性音楽は終わってました(笑)。私の先生は一つの言葉に20、30の意味が詰まった、深い助言をほんのひとことおっしゃる先生だったので、その意味がどういうことなのか、自分で考えるしかありませんでした。けれど、私にとっては自分で悩み抜き考えられたことがとてもよかったです。
どういうときに曲が生まれるのでしょうか?
お仕事としてのアレンジは誰かのために書くことが殆どで、ある程度企画や内容が定まっているのでそう悩みません。ただ、「自分の表現」としての作曲は、組み立てるのに時間がかかります。作曲というのは、メロディをただ書きとめることではなくて、構成と展開のアイデアが一番大事だと思うんです。それはいつ閃くかわからないですね。モチーフも、短時間でいくらでも書くことはできるけど、本当に使えるのはそのうちのわずか。ふっと浮かんだときも、あまり書きとめたり録音はしないです。いいものは自分の中に残りますから。
今後書いてみたい作品は?
オーケストラの曲も引き続き書いていきたいですし、一流の方々と出会いながら音楽を創り上げていきたいと思っています。ピアノ曲でいえば、初心者から上級者まで、弾いても聴いても心地よい作品を書きたいです。作曲したものも編曲したものも、それを皆さんに使っていただければ作曲家冥利に尽きます。
読者より「轟さんの曲は、どんな易しい曲にも思いやりにあふれた、ちょっとしたサプライズの音も仕掛けてあり、とても嬉しくなります」との声をたくさんいただきました。子ども向けの作品のコンセプト、気をつけていることなどお聞かせください。
どうもありがとうございます。自分のイメージも大切に、子どもたちが喜ぶ一音を散りばめるよう心がけています。
ここで、ステップ課題曲の解説を一言ずつお願いします(下コラム参照)。
最後に今後の抱負をお聞かせください。
作曲家が楽譜に書いていることを読み取って欲しい、メッセージや考えを読み解く、推理するということを広めたいと思っているんです。この意図で書いた、私にとり初めての書籍も6月に完成するので、皆さんの虎の巻としてご活用いただければ嬉しく思います。
楽しく読める本のようで楽しみですね。本日はお忙しいところありがとうございました。
左手は一音しかなくても、ひとつひとつの音に隠されたハーモニーを感じましょう。大人の初心者の方にも弾いていただきたいレパートリーです。
左手の休符がポイント。休符をよく聴いて、休符の有る・無しの違いも感じてみましょう。スラーの最後の音は、音楽的ニュアンスを感じておさめます。
左手の動き、音の性格や役目を読み取りましょう(ゆるむ音、支える音、和音を華やかにする音など)。例えば、1小節目は右手に寄り添うように。5小節目は、同じ4分音符でもニュアンスが違います。いろいろな楽器を想像して。10小節目は、右手に応えるように。
前半と後半の違いを感じて弾きましょう。前半は伸びやかなやさしい音色(ストリングスや木管楽器など)を想像して。後半の弾みはのイメージで、多少前進感をもって。
和音の響き、種類を楽しんでください。左手の休符の意味を感じて。中間部の左手は、ベースラインを感じて立体的に。
左手の4分音符の長さ、ニュアンスはいつも同じではありません。冒頭左手にスラーを記入していないのにも訳があります。いろいろなことを想像して弾いてみてください。
原曲を生かしたアレンジです。左手の伴奏は、基本的にオープンポジションなので倍音がよく聴こえます。前半はピチカート、後半は弓で弾いているイメージで。スタッカートもいろいろな長さを試してみてください(例えば、弦楽器とファゴットではニュアンスが違いますね)。43小節目からは、右手3度のキラキラ感と、左手の応答を楽しみましょう。
原曲とは違うバラード調のアレンジです。響きをよく聴きながら美しく歌いあげてください。重音はバランスに気をつけましょう。