第12回 宮前 幸弘さん
元々ジャズを勉強したくて、音大に進まれたそうですね。
そうです。ジャズ自体は好きでよく聴いてましたが、本格的にやるには東京に行かなくては!って思ったんですね。でも、ピアノは早くから始めたけれどちゃんと弾いてたわけじゃない。そこをなんとか現役で音大へ!という僕の希望を知って、その当時ついてたピアノの先生が「そんなはずでは...」と、ものすごく慌てましたね(笑)。
それで無事音大に進まれて、どのようにジャズを習得されたのでしょうか?
大学3年の頃から本格的にジャズをやり始めたんですが、早稲田のジャズ研にいたのもその頃ですね。最初は何もわからない状態ですから、まずはCDをよく聴く↑著名な方の演奏を採譜↑完全コピー集などを、CDと一緒に弾いて真似をする、ということをすごくやりました。ジャズの習得には、何よりも「聴くこと」と、「人とセッションすること」が大事だと思います。
「はじめてのジャズピアノトリオ」シリーズにも、付属CDにお手本演奏とカラオケ(ベース&ドラム)が収録されているので、練習にはうってつけですね。
やはりいきなり弾かずに、まずはCDをよく聴いて、完成されたサウンドがイメージできてから、CDと一緒に弾くことをおすすめします。お手本と一緒に弾いているうちに、ジャズ特有の訛りもわかってくるものです。
「あきないハノン」シリーズ3作も、生徒共々愛用させていただいてますが、ありとあらゆるパターンを、ホントにあきずに(笑)練習できますね。
コードは、どういう形で出てきてもつかめないと役に立たないので、最終的にはコードを見ただけで反応できることを目標にしています。ジャズに慣れていない方は、テンポキープと左手のタイミングが難しいと感じられるようですね。例えば2巻の1番~4番あたりを、必ずメトロノームに合わせてトレーニングしてみてください。
ではここで、課題曲「チュニジアの夜」のワンポイントアドバイスをお願いします。
皆さん、おそらく左手のタイミングで苦労されると思いますが、要するに合いの手。左手次第でスウィング感も増します。練習方法としては、(1)まず右手のフレーズを覚える。(2)右手の兼ね合いで、どこに左手が入るのかを確認。つまりメロディーのリズムがわかってから、左手でサポートするといいんじゃないかと思います(譜例参照)。またこの曲のように、ラテンのエキゾチックなリズムと、ジャズミュージシャンが慣れ親しんだ4ビート(スウィング)が交錯するリズムは、これだけ練習してもダメで、それぞれのリズムのスタンダード曲をよく聴いて、先にリズムの違いをつかんでおくことですね。
最後に、ピアノ教育に関してお感じになられていることは?
僕は、ついた先生が放任主義の方が多くて幸せでしたね。そのお陰で、なんでも自分で考えて、工夫する習慣ができました。とにかく、朝起きてから夜寝るまで、一日ず~っとジャズを聴いてました。クラシックはそこまで聴き込んでから習うということはあまりないですよね?僕らはジャズを好きだから、ジャズを弾こうと思うわけですが、クラシックは、ピアノが好きかどうかもわからずに習うことも多いのでは?
以前僕のところに、「ジャズを弾きたい」と来た方に、「どういうピアニストを聴いてるの?」と聞くと、「いや、ジャズはあんまり聴いたことないんです」という答えが返ってくるんで驚くわけです(笑)。塾の講師をしている生徒からは、「別に社会科を好きでない子達に教える」大変さを聞いてますが、ピアノもひょっとしたら、キライなものを好きにさせる、まずは楽しさから教えないといけない時代なのかもしれませんね。
■ 定価2,100円(税込)
■ リットーミュージック
ジャズ、ポップスを弾くための・ピアノトレーニング集 応用編(CD付)
■ リットーミュージック
1人でも楽しめる 名スタンダードナンバー30
■ リットーミュージック