第11回 国府 弘子さん
◆国府弘子オフィシャルホームページ
楽しくレッスン中!同じく大好きなビートルズは、中学の頃200曲近く耳コピーしたとか。
小さい頃から、ポピュラー音楽はお好きだったのですか?
自分の周りにある、テレビやラジオから流れる歌謡曲や映画音楽などが大好きでした。夕方5時になると『夕焼け小焼け』が近くから聞こえてくるのですが、これにピアノでいろいろな伴奏をつけて、「どうするとキレイになるか...」と探り弾きもしてましたね。
音大までは、普通のレッスンを受けていらしたのですか?
姉の真似がしたくて3歳から始めたピアノは、いわゆるクラシックのオーソドックスなレッスンでした。ただ、その子の良い点を伸ばしてくださる先生だったので、「弘子ちゃんは耳がいいから」と、「バッハのインヴェンションをいろんな調(キー)で弾いてみましょう」なんてこともやってましたね。これがゲーム感覚で面白く、応用が利くという点で今に生きてるな~と思います。
音楽家には欠かせない、『良い耳』をお持ちだったのですね。
世の中に、『楽譜を見て弾く音楽』と『耳で覚える音楽』があるとすれば、耳で覚えるスリルが好きでしたね。実は幼少の頃は身体が弱く、引っ込み思案だったので、一種の音楽療法のような感じで『耳』からたくさん取り入れてたんです。音大卒業後に、ニューヨークで受けたバリー・ハリス先生の授業も、『耳』で覚える方式でしたね。夕方になるといろいろな楽器を持って生徒が集まって来るのですが、先生がその日に思いついたアドリブ・フレーズを弾くと、生徒が少しずつ真似をして夜中の3時頃までかけて徹底的に覚えるんです。楽譜も資料も無しの授業でしたが、ジャズ初心者の理想の形だったと思います。
ジャズとクラシックの共通点、相違点は何でしょう?
"いい音色・豊かな音色"というのは、一音聴いただけでノックアウト!ピアノの音に癒されるという点ではノン・ジャンルですよね。ポピュラーやジャズの入り口は、"応用が利くか"ということに尽きると思います。共演者のためにパッと移調したり、伴奏を工夫したり...応用を利かせるには、アナライズ力も必要ですね。以前コンサートで、『ラ・カンパネラ』のリクエストが来たんですが、全く練習していないものは弾けない、でも出来ないとは言いたくない(笑)。そこで、曲の骨格は残して、飾りの部分をコクブ流にアレンジしてお応えしたこともありました。ジャズは行き当たりバッタリと思われがちですが、どうして、皆さんものすごく研究されてますよ。
ではここで、課題曲『A列車で行こう』のワンポイント・アドバイスをお願いします。
ビッグバンドで華やかに演奏されるこの曲を、ピアノソロでも弾きやすいように、シンプルめにお料理してみました。楽譜には何も書いてないのですが、4分音符はテヌート気味に切って、8分音符はアクセントを後につけて弾くと"らしく"なりますよ!詳細解説やアレンジのタネ明かしは、ぜひ楽譜本誌もご参照ください。
最後に、ジャズに興味はあるけれど、一歩が踏み出せないという読者に一言お願いします。
ホントに私も苦しみ悩んできた点なので、何かお役に立てればと思いますが...
(1)ポピュラーやジャズを、曲の違いと思わずに、自分の中にもうあるもの、好きな音楽を探してみる。
(2)それらの曲を、音楽を求めている人に心を込めて聴かせる↑これをたくさん試す。場数を踏む。
(3)理論や形をその後に学ぶ。難しく考えすぎずに、「自分の好きでいいんだ」と思うことですね。「楽譜から離れて、耳に入ってきた音楽を自由に弾いていいんだよ」というのがポピュラーですから。
そして、自分にもいつも言いきかせていることですが、人と比べ出すと、あせったり悩んだりしますよね。「人と比べるのではなく、自分の昨日と明日を比べられる」と、音楽で全員幸せになれるんじゃないでしょうか。情感という点では、昨日より明日の方が絶対深まってるはずですから!
■ヤマハミュージックメディア
※ステップ課題曲・応用5「A列車でいこう」収載
■ヤマハミュージックメディア
※ステップ課題曲・応用7「ウェーブ」、発展5「クレオパトラの夢」収載
■ビクター(株)
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