第7回 西村 由紀江さん
◆西村由紀江ホームページ
作曲はどのように学ばれたのでしょうか?
3才から、ヤマハの音楽教室に通いました。〈チューリップ〉の「さいた?」の「た」を半音下げて歌うと、たった1音でも暗くなるんだ!と気づいたのが、作曲のはじまりですね。8才のときに、自作曲を弾くコンサート(JOC)で特別優秀賞を最年少でいただき、国際親善のための音楽使節として、何度か海外でも演奏させてもらいました。自分の曲が、言葉も文化も違う人たちに受け入れてもらえたときの感動は、今でも忘れられないですね。
以前ラウンジで演奏していた頃には、西村さんの作品もよく弾かせていただきました。特に〈やさしさ〉という作品にはリクエストが多かったのですよ。
うれしいですね。でも実は、精神的に不安定だった頃の作品なんですよ。
時代がバブルに向かう中、ピアノのインストゥルメンタルの音楽は単調でつまらないと、なかなか受け入れてもらえなかったんです。〈やさしさ〉は、自分の心が落ち込んでいたとき、友人のやさしさが心にしみ、その感動から生まれた曲です。
曲は、多感になっているときに浮かぶのですか?
そうですね。うれしい、くやしい、など喜怒哀楽を感じたときに、「うれしい」という言葉の代わりに音が浮かびます。作曲するときは、自然に音が聴こえてくる感じです。
言葉の代わりに、ピアノで表現されているのですね。
私の曲を聴いてくださった方が、少しでもホッとしたり、忙しさの中で乾いていた心が潤い、周りの人にやさしい気持ちになれたり、その一瞬のお手伝いができればうれしいですね。CDって、ほんの一枚のディスクだけど、場所も時間も超えられる。いつでもどこでも聴く人に伝えられる。会ったことがない人に、どのような気持ちを届けられるのか、未だに神秘的だし、不思議ですよね。でも、このような触れ合いの素晴らしさを実感できるようになったのは、つい最近なんですよ。
ピアノ教育に関してお感じになられていることは?
音大卒業後、ザルツブルクで一ヶ月ほど受けたレッスンが、忘れられないですね。先生が注意するのではなく、演奏でお手本を示してくださるんです。演奏を聴いていると「先生みたいに弾いてみたい!」と、気持ちをかきたてられるんですね。イメージを自由に描きながらピアノを弾けるのが、すごく楽しかった。
あと、一番のおすすめは、友だちとのアンサンブル!ピアノを一人で弾くだけでは、もったいない。ぜひ音大などでも、アンサンブルをたくさん取り上げてほしいですね。
ではここで、ステップ課題曲のワンポイントアドバイスをお願いします。
私の曲は「楽譜上は簡単そうだけど、弾いてみると難しい」と、よく言われます。(笑)テーマの譜例で解説しますので、参考になさってください。(譜例参照)
デビュー22年目で独立されたとのことですが、今後の抱負をお聞かせください。
いろいろなジャンルの方とコラボレーションして、ピアノの可能性を試していきたいですね。最近では、絵本作家の葉祥明さんの絵に合わせて演奏したり、無声映画の時代の映像と、活動弁士さんの活弁に合わせてピアノを弾いたりもしているんですよ。
あとは、何年もかかる覚悟でピアノのメソッドも作りたい。とにかく、私の一番の願いは、ピアノに興味を持った方が、楽しく続けられる環境を作ることなんです。
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《譜例》 課題曲ワンポイントアドバイス:「Fantasia」西村由紀江作曲
ベスト コンポジションズ3
■ヤマハミュージックメディア
※発展4課題曲「Fantasia」収載
■ ヤマハミュージックメディア
※応用4課題曲「ワン・ノート・サンバ」収載
新・やさしく弾きたい人のために
■ ヤマハミュージックメディア
※ピアノ初心者のために、本人がアレンジ・演奏したCD付き。