ピティナ調査・研究

第5回 秋谷 えりこさん

わくわくポピュラーガイド
第5回目は、ピアニスト・作・編曲家として、ジャズ・ポップス・クラシック・環境音楽・CMとジャンルを超えて国際的に活躍されている、秋谷えりこ先生のご登場です。(掲載:Our Music272号/2008年4月30日発行より)

顔写真
秋谷 えりこ先生
4歳よりピアノを始める。バークリー音楽大学作曲編曲科に入学。クィンシー・ジョーンズAward受賞。その後N.Y.ジュリアード音楽院在学中には、ナンシー・ウィルソン等多くのアーティストと共演。帰国後、「ホール&オーツ」等、多くのバックメンバーを務める傍ら、作・編曲家としては、「たかの友梨」「ネスカフェ」等数々のCM、TV 、出版にとジャンルを越え自由で鋭い感性と表現力を持って活動中。世界のトッププレーヤー達から絶対の信頼を得る女性アーティスト。
・公式ウェブサイト
・秋谷えりこのプロデュースするスクール「Akiya Method」
生け花がご趣味。どんなに遅く帰っても花を生けるそうで、松風流師範の資格もお持ちです。車も大好きで、かなりの飛ばしやとの噂も・・・
Interview
クラシックとジャズのかけ橋に

4歳から始められたピアノは、クラシックでしょうか?

オーソドックスなクラシックの教本をやりましたね。中学の頃からは、アレンジに興味があったので、エレクトーンを2年ほど習って、高校からはヤマハでジャズピアノを習ってました。

その後すぐ留学されたわけですね?

19才のときにボストンのバークリーに入りましたが、全て奨学金がとれたので、1年半で卒業することができたんです。それで親を説得して、その後ニューイングランド音楽院のクラシックピアノ科に編入しました。ここでハイドンの孫弟子である恩師、ヤコブ・マキシム先生とも出会い、クラシックピアノの全てを教わりました。

日本ではまだクラシックとポピュラー両方行き来できるピアニストは少ないのですが、秋谷先生のような方に今後たくさん出てきていただくには、音大などで自由に両方学べるといいですよね。

そうです、そうです。海外ではグルダさんのように両方出来る方がものすごく主流なんですね。私も日本人なので、"クラシックとジャズのかけ橋"のようなことが日本でも出来たら、という思いがとても強くて、楽譜・音源制作や更新の育成に頑張っているところです。

それは心強いです!私も大変な思いをしながら、ステップポピュラー課題曲の道筋を作ってきましたが、クラシック・ポピュラーと分けるのではなく、クラシックをベースにしつつ、今生きている音楽にも幅広く対応できる音楽人がたくさん育ってきて欲しいですね。

花も音楽もアレンジ次第!?

昨年秋に発売された、N.Y収録のCD「Tell Me A Bedtime Story」も素敵な選曲で、大変評判がよいそうですね。2月に出版された「ハイグレードセッション ジャズ」もかっこよい曲が目白押しで、うちの生徒達も目を輝かせて取り組んでます。

ありがとうございます。こういうセッションのアレンジは、それぞれメンバーが違うので、奏者が一番生きるようなアレンジをその都度考えているんですよ。生け花とも共通する点が多くて、たとえばバラとユリのいいお花が手に入ったとき、この強力な組み合わせをどうやったら両方が生きるかなと考えるのが楽しいんです。これはソロピアノでも同様で、演奏することで作曲家をどう生かすかということに通じますよね。

演奏のアドバイス

先生のアレンジされた「虹の楽園」(ジョー・サンプル)は、ステップ展開3の課題曲ですが、こういったサウンドとリズムに慣れるためのポイントを教えていただけますか?

では、冒頭の部分でご説明しますね。(譜例1、2参照)

ジャズに初めて取り組まれている方に一言アドバイスを。

クラシックとジャズの一番の違いは、"スイング"のリズムではないでしょうか。「一拍を3連で感じる」ことが大事ですが、これは人種によっても違うんですね。音の長さのニュアンスも言葉とリンクしていて、日本語は全部同じ長さ、イントネーションですが、英語には「飲み込む音」があります。ジャズにもこの「飲み込む音」が多くて、同じスイングでも、白人のビル・エヴァンスと黒人のハンク・ジョーンズではイントネーションが前々違うし、ミシェル・カミロだとラテン系のちょっと喧嘩している感じ。言葉と密接に関連しているのが面白いですね。
昨年発売のDVD「ジャズ・ピアノの嗜み」にも、ジャズを楽しむためのヒケツをギッシリ収録しましたので、何かのヒントにしていただければ大変うれしいです。

  • 「Rainbow Seeker(虹の楽園)」(ハイグレード・セッション/フュージョン(CD付))の冒頭イントロ部分より
    【譜例1】
    ・ジャズ特有の「テンション」を耳で聞き分ける。
    ・コード・トーンのみ/テンション9th
    【譜例2】
    ・16ビートは細かく感じる。左手&右手を別々にメトロノームでゆっくりから練習。
    ◆ テンションとは?
    緊張感をもたらす音のことです。ここではポップスでもよく使用する9thを、『ルートの代わりに』⇒『ルートの全音上の音を置く』と覚えましょう(譜例1)。食事で言う、おすしに わさび!のような"刺激音"です。テンション有りと無しのサウンドを感じることが大切です。(譜例2)は、16ビートというクラシックにはないリズムです。コツは1拍を16分音符で、常に細かくとらえることです。そうすると、休符も含め細かく正確なリズム感が得られます。
 
楽譜のご紹介
大人の楽器生活
ジャズ・ピアノの嗜み
■株式会社アトス・インターナショナル
■定価3,990円
■インストラクター/ピアノ:秋谷えりこ
ハイグレード・ピアノ・ソロ
宮崎アニメ&スタジオジブリ
■シンコー・ミュージック
■定価1,800円+税
■編曲:秋谷えりこ
ハイグレード・ピアノ・ソロ
セレクション(CD付)
■シンコー・ミュージック
■定価2.500円+税
■編曲・演奏:秋谷えりこ