第4回 倉本 裕基さん
倉本さんは、大学で数学や物理を学ばれたそうですが、音楽と何か共通点はありますか?
音楽って時間軸と音の高さの流れじゃないですか。ドレミもあれば、ミレド、ドミレもある。もともと数理的なものなんです。作曲も数学の問題を作るのにも美的感覚が必要です。
ピアノはやはりクラシックから入られたのでしょうか?
ピアノをはじめたのは小1の5月からですが、習う前から、ラジオで聴いた「有楽町で会いましょう」や「お富さん」を両手で弾いてました。バイエルから入り、バッハなども勉強しましたよ。家庭の事情で小6のときピアノを手放すことになりましたが、転校した先に中学では珍しいオーケストラ部があり、ここでチェロを担当、様々な管・弦楽器も経験できました。朝と放課後には音楽室でピアノも練習させてもらえて、ここで本当に音楽を楽しめたことは幸運でしたね。
東工大に進まれると同時に、ピアノに関わるあらゆる種類の仕事を経験されたとか。
ホテルのバーやラウンジで演奏したり、バンドやアレンジの仕事etc・・・現場では学生といえどプロとして扱われるので、鍛えられましたよ。楽譜が市販されていないものは、レコードを聴いて覚えたり、自分でアレンジするしかない。バンマス(バンドのリーダー)が厳しくて、曲の途中でパッと移調したりテンポが変わったり・・・それについていけなければ次の仕事は来ないわけです。ある意味正しい社会ですよね(笑)。
CDデビューは34歳の時とのこと、このアルバムに収められている代表作「霧のレイクルイーズ」は、ステップ発展1の課題曲でもあります。一言アドバイスをお願いできますか?
これは世の中の希望、憧れを表現した曲で、天啓のように浮かびました。ペダルを入れて十分メロディーを歌わせたり、トリルでのピアニスティックな表現など、見た目よりは難しいと思いますが、お許しを!(譜例参照)
他には、応用5の「ララルー」、展開3の「星に願いを」とありますが。
「ララルー」は♭4つのキーなので、この曲で♭に慣れていただきたいですね。「ねこふんじゃった」だって黒鍵、出っ張ってるから弾きやすいじゃないですか(笑)。スケールを練習してから曲に入るとよいでしょう。「星に願いを」は、演奏会用にアレンジしたので、難しいですよ。でもその分コード進行や、スケールなどもちょっと凝ってますから、弾き映えすると思います。
確かにクラシックの名曲の中にポッと入っても、ひときわ映えるアレンジで、どこで弾いても好評との声をたくさん聞いております。
倉本さんの「自然」と「ロマンス」をテーマにした音楽は、聴く人の心に安らぎをもたらすことから、韓国のみならず国内でも大ブレイク中。コンサートも数多く行われているそうですが、今後の抱負は?
自分のスタイルに行き着いたのは最近のことですね。緊張をできる限りなくして、リラックスして聴いてもらえる作品を心がけています。『ピアノは趣味としては楽しみ、演奏家としては試練、作曲家としては苦行』(笑)ですが、まだまだ頑張りますよ。
倉本裕基編
■「星に願いを」(ステップ展開3課題曲)「ララルー」(2008年度ステップ新課題曲)などのディズニー作品と、ポピュラースタンダードナンバー全22曲を収録。
ロマンスコレクション
■代表作「霧のレイクルイーズ」(ステップ発展1課題曲)、「ロマンス」など全10曲を収録。
■楽譜対応CD
日本クラウン:2,300円+税