こどものためのJAPANピアノ作品集9-2: 湯山昭作曲 『お菓子の世界』 特集2
来月10月8日の「ピティナ公開録音コンサート」で全曲演奏させていただく『お菓子の世界』について、先日、作曲者・湯山昭先生にレッスンを受けてまいりました!今日は、そのレッスンを通して学んだエッセンスから、『お菓子の世界』演奏のための極意をお伝えさせていただきます。なおコンサート当日には湯山昭先生もご来場され、一言トークをいただける予定!ぜひみなさまにも、お立会いいただければ幸いです(ご来場ご予約はコチラまで)!
レッスンにて最もご注意いただいた点は、やはりアーティキュレーションについてでした。湯山先生の楽譜には、スラーやスタッカート、テヌートやアクセント、速度記号やペダル表示が詳細に書き込まれていて、それらがどれも重要な意味を持っています。中でもスラーについて、特に左手が2拍子、右手が3拍子といった、左右の拍子感がずれるポリリズム(複合リズム)の部分では、左右ずらしてスラーを付けることがなかなか難しく、細やかにご指導いただきました。またテヌートについても、フレーズの中での自然なテンポの揺れ(アゴーギグ)と合わせて、しっかり表現することをご指摘いただきました。これらアーティキュレーション記号を忠実に表現することで、曲が驚くほど生き生きしてくるのを、身をもって実感しています。
ところでこれらアーティキュレーション記号は、楽譜が再版されるごとにバージョンアップされていることを、みなさまご存知でしたか?『お菓子の世界』は、1974年に初版発行以来、この10月末に136版発行という、邦人ピアノ作品の中では驚異的な再版回数を重ねている楽譜です。私は愛着もあって、お恥ずかしながら自分が子供のときに使っていた第44版を中心に練習をしていたのですが、新しい版では特にメトロノーム表示とペダルの点でかなり異なっていることをご指摘いただき、慌てて確認しているところです。先生がおっしゃるに、「音自体は初版以来全く変えていないですが、作曲家は再版のたびに楽譜を見直して手を加えているんですよ」とのこと...。こうして楽譜には、ますます磨きがかけられていたのですね!
ここで全26曲について、演奏の際のワンポイントを一覧にさせていただきます。楽譜の「練習の手引き」と合わせて、ご参照いただければ幸いです。
『お菓子の世界』は、ご承知の通り、全ての曲にお菓子にまつわる題名が付いている曲集です。先生ご自身も、「シュー・クリームを初めて食べたときの感動は、やっぱり忘れられないねぇ」などなど、1曲ごとにその題名にまつわる思い出をお持ちのご様子でしたが、演奏の際にも、ただシュー・クリームを思い浮かべるだけではなく、それにまつわるストーリーを思い描くことで、また世界が広がっていくように思います。私自身は、実は1曲ごとに、お菓子とともにそれにまつわる人物が浮かんできてしまって仕方がありません。例えば、「シュー・クリーム」では、'母親にシュー・クリームを持たされて、好きな女の子の家に届けに行く途中の小学校低学年のシャイな男の子'、「バウムクーヘン」では、'女学生時代によく喫茶店で食べたバウムクーヘンを思い出し、そこからこれまでの人生を、ちょっとの後悔とたくさんの自信を持って振り返っている中年女性'といった具合に...。本当に、何歳になっても弾けば弾くほど弾き応えのある、奥深く魅力的な作品集だと、改めて実感しています!