こどものためのJAPAN6-1: 発表会で弾きたい全音JAPANピース1
前回の「全音ピアノピース大解剖!」に続き、今回は発表会で弾きたい全音JAPANピースをご紹介します。第一弾の今回は、なんといってもこの曲、平井康三郎作曲「幻想曲さくらさくら」(297番)です!
ピース日本人作品としては異例の(?)人気を誇る、この作品。なんと、こちら全音ホームページのベストセラーピース30曲にも、「エリーゼのために」や「トルコマーチ」などと共に、ノミネートされています。私も、大学で教えている保育科の学生さんが、「こどもの頃に発表会で聞いて、ずっと憧れていた」と、この曲を弾いてきたことが...!誰もが知るメロディーを華やかにアレンジしたこの「幻想曲さくらさくら」は、特に発表会ではひときわ映える作品と言えましょう!
作曲家・平井康三郎(1910-2002)氏により作曲されたこの作品は、日本人なら誰もが知る「さくらさくら」を、幻想的にアレンジしたものです。「さくらさくら」は、江戸時代に子ども用の筝の曲として作られたもの(作曲者は不詳)でしたが、そのメロディーの美しさから、明治以降に歌詞が付けられて一般に広まりました。平井康三郎氏は、東京音楽学校でヴァイオリンと作曲を学び、日本音楽コンクール作曲部門で1位を受賞した経歴を持つ作曲家。大学在学中より民謡に関心を持ち、民謡を編曲した合唱曲を多く残していますが、この曲もその流れの中で作曲された作品と言えましょう。華やかな序奏に続いて、原曲の素朴さを保ったテーマが現れ、その後'祭り'を彷彿とさせる中間部を挟みつつ、素朴なテーマが幻想的にそして煌びやかに変奏されていきます。
日本的「もののあはれ」を歌い上げるようなテーマのメロディー、「太鼓のように」と記された中間部の左手リズム、そして曲中何度か登場する「stringendo」のテンポ感...。まさに日本音楽そのもののようなこの曲を、美しく格好良く表現するには、まずは身近にある日本の音楽を思い浮かべながら、思い切り表現してみることが大切です。演歌のようにメロディーを色濃く歌い、和太鼓奏者になったつもりで「太鼓」のリズムを刻む、「stringendo」は拍子木を打つかのようにまっしぐら...!'なりきって'弾くことこそが、弾く人も聴く人も気持ちのよい演奏への第一歩でしょう。
同じように日本のうたをテーマとした作品が、全音JAPANピースには他にもいくつか存在します。例えば、同じく平井康三郎作曲「荒城の月の主題による変奏曲」(296番)や、小山清茂作曲「かごめ変奏曲」(316番)、また山田耕筰作曲「からたちの花」(456番)など...。いずれもレベルは、同じく中級のCです。幼い頃に親しんだわらべ歌や、学校の授業で習った日本歌曲を、ピアノ用に煌びやかにアレンジした作品群。これらを弾くことで、またひとつ、ピアノの楽しみ方が増していくことを願います!