ピティナ調査・研究

こどものためのJAPAN5-3:中田喜直作曲 『こどものゆめ』 上級編

ピアノ曲 MADE IN JAPAN

中田喜直作曲『こどものゆめ』大解剖、最終回の今回は、上級編(「★★★」=ツェルニー30番後半以上)7曲を、ご紹介させていただきます!

和音をしっかり掴む!

さすがに上級編!譜読み的にもテクニック的にも、そして音楽的にも、初級・中級に比べてかなり難しくなります。メロディーを美しく歌わせること、またリズムを楽しく刻むことのみならず、和音をしっかりと掴み、その色合いを表現することまで必要となるためです。速い連打和音や分散和音もふんだんに使われるので、まずは手の甲で支えをしっかりと作り、和音内の全ての音をくまなく押せるようになることが大切でしょう。

表
ハーモニーで色彩変化を

それがしっかりとできるようになった上で、さらにハーモニーの色彩変化を表現できれば、申し分ありません!和音が移り変わるたびに変化してゆく、微妙なハーモニーの色合い...。中田先生の作品では、やはりメロディーが命であることには変わりありませんが、その背景で変化してゆく豊かなハーモニーを、無神経に弾くのと繊細に表現するのとでは、全く違う曲に聞こえることでしょう。同じメロディーでも、和音の色彩によっては全然違った味わいになるのです!

各曲ご紹介

ハーモニーの繊細な表現には、まずはそれを感じ取るセンスが必要ですね。ただセンスというものは、残念ながら、なかなか自然に身に付くものではありませんね。その辺りは先生が、和声的な知識も活用しながら、色々な表現の仕方を弾いて示してあげることで、経験として蓄積していってもらうことが大切でしょう。

以下これまで通り、音源とともに、各曲のポイントを《メロディー》、《リズム》、《ハーモニー》に分類し、曲ごとに簡単な解説を加えさせていただきました。選曲、そしてレッスンの参考にしていただければ幸いです!

第18番 朝のうた 《ハーモニー》 

演奏:須藤 英子


メロディーを彩る16分音符の淡い色彩。ペダルを使って香り立つように弾きましょう。後半部では、♭系から♯系へのハーモニー変化が何度かありますが、それをいかに表現するかがポイントです。最後の左手の細やかなパッセージは、鳥のさえずりか何かでしょうか・・・。

第19番 アルペジオ練習曲 《ハーモニー》 

演奏:須藤 英子


文字通りアルペジオの練習曲ですが、その和音の連なりの中から、時々中田節メロディーが顔を覗かせます!まずはアルペジオをくまなくしっかりと掴めるように、そしてさらにその変化を表現していけるように、ゆっくりじっくり取り組みたい曲です。最後に一瞬現れる妖艶な音階が、この明るい曲調に彩りを添えています。

第20番 ファゴットとフリュートの対話 
《メロディー》 

演奏:須藤 英子


愛嬌あるファゴットと、のびやかなフリュートの対話が楽しい曲です。付点のリズムが乱れないように、それでいて管楽器らしく長いフレーズ感を持って弾きましょう。中間部、両方のメロディーがバッハの対位法のように重なってくるところが、この曲で一番難しい部分かもしれません。

第21番 ノクターン 《メロディー》 

演奏:須藤 英子


中田節がおおいに発揮された和風ノクターン!右手の美しいメロディーの下で、淡く変化してゆく左手のハーモニー。左手だけでも美しい曲に聞こえてくるまで、いろいろ工夫できるといいですね。一番最後の余韻の残り方が、何とも言えず哀愁をそそります・・・。

第22番 おどりとうたと 《リズム》 

演奏:須藤 英子


「おどり」の部分では、途中5/8拍子も登場するなど、リズム的な面白さを楽しめる曲。和音をしっかりと掴んだ上で、アクセントにも気をつけながら、しっかりリズムを刻みましょう。一瞬登場する「うた」の部分では、和音が一気に背後に回り、メロディーの引き立て役へと変身します。リズムのみならず、和音の様々な扱い方も学べる曲とも言えるでしょう。

第23番 風の即興曲 《メロディー》 

演奏:須藤 英子


淡い3連音符の連なりから、ハーモニーが感じられたり、ふわっとメロディーが浮かび上がったりと、ハーモニーとメロディーが美しく混在している曲。どの部分をどう捉えるかで、幾通りにも表情を工夫できるでしょう。どんなときにも決して重くならず、さわやかな風になりきって弾きたい曲です!

第24番 演奏会用練習曲 《ハーモニー》 

演奏:須藤 英子


曲集の最後を飾る曲らしく、華やかで大人っぽい曲。和音をしっかりと掴み、そのハーモニーの変化まで表現できると、一気に曲が引き締まってくるでしょう。最後に一瞬登場するカンタービレの部分では、どこか懐かしい中田節メロディーに、ホッと心が和みます。

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