ピティナ調査・研究

こどものためのJAPAN5-2:中田喜直作曲 『こどものゆめ』 中級編

ピアノ曲 MADE IN JAPAN
表

中田喜直作曲『こどものゆめ』大解剖第3回の今回は、前回の初級編につづき、中級編(「★★」=チェルニー30番前半ぐらい)の7曲を、ご紹介させていただきます!

自然なリズム感を身につける

初級編では、メロディーを歌わせることを重視した曲が多かったですが、中級編では、それにリズム的要素も加わった曲が多くなります。と言っても、現代音楽的な複雑なリズムではなく、例えば4拍子の拍子感であったり、また付点のリズム感であったり...。聞いている人も一緒に体を動かしたくなるような、自然なリズム感を身につける練習といえるでしょう。

メトロノームを活用!

聞いている人も一緒に体を動かしたくなるように弾くには、まず一定のテンポを保つことが大事ですね。そこで、曲をある程度弾けるようになったら、メトロノームを使ってみるとよいでしょう。自分では気付かなかったテンポの揺れを、強制的に直してくれます。ただ今度は反対に、メトロノーム通りで音楽的ではなくなってしまう場合がありますよね。曲を完成させていく段階では、一定のテンポ感を持ちつつ、その均等なビートからはみ出しながらメロディーを歌わせる、というテンポルバートの技術こそが、大切になってくるのかもしれません。

各曲ご紹介

ただ、テンポルバートといっても、なかなか頭で計算してできるものではありません。その点メロディアスな中田作品は、自然にそれを学ぶことができる教材といえるでしょう。一定のテンポ感に留意しつつ、歌いたいところは少しはみ出しても歌ってしまおう!という感じでしょうか・・・。

ここでは各曲を、初級編の《メロディー》と《ハーモニー》に《リズム》も加えて分類し、曲ごとに簡単な解説を書かせていただきました。音源とともに、選曲の参考にしていただければ幸いです!

第9番 おじいさんのワルツ 《リズム》 

演奏:須藤 英子



日本人には難しいワルツのリズム...。'ブンチャッチャッ'という左手を一定に刻むのは、跳躍もありかなり難しいのですが、それを救ってくれるのが「おじいさんの」という題名かもしれません。少しぐらいヨタヨタしつつも、楽しんで踊っている様子が表現できるといいですね。

第11番 右手黒鍵 《メロディー》 

演奏:須藤 英子



よりダイナミックな題名が付いていてもおかしくない、ストーリー感のある素敵な曲です。右手のみならず左手も黒鍵が多く、その♭的な優しい音色が、やや民謡風の柔らかいメロディーに乗って流れていきます。スタッカートとレガートを弾き分けながら、細い黒鍵の上でも、美しくメロディーを歌わせていきましょう。

第12番 たのしいワルツ 《リズム》 

演奏:須藤 英子



「おじいさんのワルツ」とは違い、左手の'ブンチャッチャッ'がない、ちょっと洒落たワルツ。一定のリズム型がないなかで、いかに踊りやすく3拍子を刻んでいくかがポイントです。2拍目に休符を含むリズム型の部分は、特に間が詰まらないように気をつけましょう。黒鍵を多く含む、優しい響きの素敵な曲です。

第13番 朝のさんぽ 《メロディー》 

演奏:須藤 英子



時折聞こえてくる中田先生らしい日本的な節回しが、なんとも愛らしい曲。後半には16分音符や半音階も出てきて、少し難しくなりますが、それをいかに美しくレガートで弾けるかがポイントです。朝のさんぽ中に見えてくる、色々な風景を思い浮かべながら弾きましょう。

第14番 元気なおどりとしずかなおどり 《リズム》 

演奏:須藤 英子



付点のリズムが、少しジャズ的な雰囲気も醸し出す、カッコいい曲!4拍子は、クラシックでは1拍目と3拍目が大事とされていますが、この曲では、どちらかというとウラノリ、つまり2拍目と4拍目を強調する方が、素敵に聞こえるかもしれません。最後に出てくる3拍子の部分が、さらに大人っぽさを演出します。

第15番 明るいひざし 《メロディー》 

演奏:須藤 英子



左手の分散和音にのって、右手が大らかに歌います。右手のメロディーが、音数の多い左手に負けてしまわないよう、気をつけましょう。左手にもスラーがついている部分は、右手の半分ぐらいの音量で、一緒にクレッシェンド、デクレッシェンドをしてあげると、美しい弧線が描けます。

第16番 みんなで歩こう遠くまで 《リズム》 

演奏:須藤 英子



4拍子の元気な行進曲!列が乱れないよう、一定のテンポで弾きましょう。メロディーには、スキップをしているかのような付点のリズムが常に出てきます。左手がメロディーの部分は、右手の刻みを軽くして、左手に堂々とスキップさせてあげたいですね。一瞬現れる3拍子の部分は、途中で寄り道でもしているのでしょうか...。最後まで生き生きと、楽しさ溢れる曲です。

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