ピティナ調査・研究

こどものためのJAPANピアノ作品集2:武満徹「こどものためのピアノ小品」

ピアノ曲 MADE IN JAPAN

前回の連載でご紹介した作曲家・武満徹。そのピアノ曲の中に、子供のための作品があるのをご存知ですか?

子供のための?大人のための?

武満徹作曲「こどものためのピアノ小品」は、《1 微風》 《2 雲》の2曲から成ります。「こどものための...」とはいえ、その空気感といい、どこかジャズ風の節回しといい、大人でも充分に味わえるこの2つの作品。両曲とも1、2分の短い曲ですが、各々に世界があり、魅力的な作品です。

♪ 参考音源 1. 微風
演奏:須藤 英子
♪ 参考音源 2. 雲
 
演奏:須藤 英子
映像:宮森庸輔
楽譜について
楽譜

この作品は、1979年に、NHKテレビ「ピアノのおけいこ」(講師:井上直幸)の教材として作曲されました。現在楽譜は、ショット・ミュージックより出版されています(1,050円)。 難易度は、ブルグミュラー後半からソナチネぐらいでしょうか。複数声部の弾き分けや、rit.の雰囲気の出し方などは、大人でも難しいぐらいです(反対に、子供の方がすんなり表現できてしまうのかもしれませんが...)。現代曲の楽譜にはよくあることですが、この楽譜にも指番号は書き込まれていないので、レッスンで使用する際には、まず生徒さんの手と相談しながら、指使いを決めていくことが必要になってくるでしょう。

武満徹の調性音楽

武満徹は、いわゆる現代音楽畑の作曲家ですが、現代音楽以外にも、映画音楽やポップソングなど、様々な分野で魅力的な作品を残しています。この「こどものための小品」も、現代音楽というよりはポップソングに近い、調性音楽の一種。実は、この作品が作曲された1979年頃から、本業・現代音楽の方でも、'武満トーン'と呼ばれる、ロマンチックな響きや美しい旋律を用いるようになります。そしてそれらは次第に、多くの人の共感を呼ぶようになりました。幼い頃に、ジャズやシャンソンに憧れて、音楽を志したという武満徹。前回の連載でご紹介したような前衛的な音楽を経て、やがて'武満トーン'に落ち着いた彼の心のうちには、この「こどものための小品」のような、シンプルで美しい音楽が、もしかしたらずっと存在し続けていたのかもしれません。

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