インタビュー:第5回 福間洸太朗さん
先日、東京巣鴨の東音ホールにて、「~ピアノによる武満徹へのオマージュ~」という素敵なコンサートが開かれました。
演奏家は、今年8月にNAXOSレーベルよりCD「武満徹ピアノ作品集」をリリースされた福間洸太朗さん(25)。福間さんは、高校卒業後パリ音楽院、そしてベルリン芸術大学に留学、数々のコンクールに入賞され、現在では世界各地でコンサートを開いていらっしゃいます。
当日のコンサートでは、武満作品とそこに影響を与えた作品が、福間さんのトークを交えて交互に演奏されました。武満氏のご家族も見守られる中、音と語りで綴られた武満ワールド。終演後、武満作品との出会いやその魅力について、福間さんにお話を伺いました。
とても素敵なコンサートでした。それにしても複雑な現代曲をほぼ全て暗譜で弾いていらして、素晴らしいです。
福間さん:現代曲の暗譜では五感をフルに使う気がします。目と耳だけではなく、身体の動きや響きの色合いなども...。
福間さんが現代音楽に目覚められたのは、パリに留学されてからと...。
福間さん:やはりフランスという国が、現代音楽への関心が強かったというのが一番の理由かもしれません。日本にいた時と違い、パリでは現代曲に触れる頻度が全然違いました。例えばパリ音楽院の入試でも、シューマンと一緒にシェーンベルクの無調音楽が課題に出されましたし、年次末テストでも、エチュードのうち1曲は20世紀の作品、という...。
日本の音楽大学では、あまりないことですね。
福間さん:その時初めてリゲティのエチュード(第6番)を弾いたのですが、幻想的でありながら、数学の世界にも通じるその緻密な構造にすっかり魅せられました。以来、現代曲にも興味を持つようになり、演奏の機会も増えていきました。
「ピアノによる
武満徹へのオマージュ」 コンサートプログラム 武満徹/『二つのレント』よりアダージョ
ドビュッシー/レントより遅く メシアン/前奏曲第7番『静かな嘆き』 武満徹/『遮られない休息』より第1番 ケージ/7つの俳句 武満徹/ピアノディスタンス クセナキス/エヴリアリより 武満徹/フォーアウェイ ドビュッシー/月の光 メシアン/『小さな鳥のスケッチ』より 武満徹/雨の樹素描&雨の樹素描II バッハ/『マタイ受難曲』より 武満徹/リタニ |
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福間さん:武満さんの作品に興味を持ったのも、留学後でした。フランスで武満さんの音楽が如何に評価されているかを知って、すごくショックだったんです。
なるほど。
福間さん:自分の国の作曲家なのに、あまり知らない上に1曲も弾いたことがない...。そこでちょっと恥をかいて、絶対いつか勉強したいと思うようになりました。
今でこそ、日本でも武満さんは広く知られるようになりましたが、ヨーロッパではそれ以上によく知られてきたのかもしれませんね。
海外での武満作品人気の理由は、どのようなところにあると思われますか?
福間さん:色々あるとは思いますが、例えば「間」ではないでしょうか。西洋音楽における休符には"息継ぎ"や"次への準備"的な要素があると思いますが、武満さんの作品では「間」の中に言いたいことが入っている...。
日本の伝統的な美学や音楽にも通じるところがありますね。
福間さん:そうですね。それから、日本の四季にも通じる「色合い」。日本の四季ってすごく繊細ですよね。その緻密な色合いが武満さんの作品にはあるような気がします。メシアンなどは、もっとブリリアントでカラフルですよね。
今日の福間さんの演奏でも、それは感じました。
福間さん:そして今回ご紹介したように、年代ごとに作風が変化するというのも、武満さんの魅力だと思います。作曲家によっては同じ作風を保ち続ける方もいらっしゃいますが、武満さんのように様々な影響を受けながら作風が変化し、晩年になって洗練されたご自分の色を出されている、というのは魅力的です。
今回のような「武満徹オマージュコンサート」を、今秋フランスでも開かれたそうですが、反響はいかがでしたか?
福間さん:パリとトゥルーズで開いたのですが、期待以上の反響で僕自身ものすごく感動しました。パリでは、他のコンサートの時に「秋に武満を弾きます」と予告しただけで、お客様が歓声を!トゥルーズでは、200席分のチケットが1週間前には完売してしまいました。
武満人気はやはり根強いのですね!
福間さん:そうですね。また向こうの方は、「オマージュ」が好きなんですよ。僕の場合は、武満作品とそこに影響を与えた作品を、トークを交えて年代順に演奏するという形で武満さんの人柄や人生をお伝えしましたが、その点がフランスでも好評だったようです。
2月には南アフリカでも開かれるそうで!
福間さん:はい...、あちらでどういう反響が出るのか...。
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ブログでのご報告を楽しみにしています!どうもありがとうございました。