ピティナ調査・研究

エッセイ「和ピアノへの道」4 現代音楽へのギモン

ピアノ曲 MADE IN JAPAN

雅楽への恋心から、13年間続けてきたピアノを辞め、東京芸大楽理科にて現代音楽に目覚めた私は、そこで現代音楽漬けの生活を送ります。CDやコンサートで聴くのも現代曲、雑誌や美術館で見るのも現代アート、そして副科ピアノのテストで弾くのも武満徹。今思えば、偏った学生生活だったかもしれません。

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卒業論文も、もちろん現代音楽について書きました。指導教官の船山隆先生から渡されたテーマは、日本人作曲家「一柳慧」 。その作風の変遷について、大量の資料を手に必死に書いたのを覚えています。現代音楽の楽譜を本格的に"分析"したのも、その時が初めてでした。混沌とした音楽でも、裏では技法が使われていたり、それなりの美学があったり...。先輩に手厚くご指導いただきながら、複雑な楽譜を"読解"した経験は、今でも役に立っています。

 

ですが現代音楽を真面目に研究する中で、今度は反対に"技法"や"美学"など、音楽自体からは少し離れた問題にばかり関心がいくようになり...。そのうちハタと思ったのです。「私は一体何を研究しているのだろう...」。そしてそのギモンが、私だけの問題ではなく、現代音楽界全体の問題でもあってきたことに、うすうす気づき出したのでした。

 

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今回の音源「変奏3」は、12音技法という作曲技法(→詳しくは連載第7回「12音主義」へ)が使われた作品です。

 

松平頼則作曲 『盤渉調「越天楽」によるピアノのための主題と変奏』より「変奏3」

 

雅楽「越天楽」をテーマとしたこの変奏曲も、ここまでくると随分現代的(?)に聴こえますね。なお作曲者の松平頼則は、12音技法と雅楽をミックスさせたこの独創的な作風が評価され、世界的にも名前を知られるようになりました。