ピティナ調査・研究

エッセイ「和ピアノへの道」3 現代音楽との出会い

ピアノ曲 MADE IN JAPAN

雅楽への恋心から、13年間続けてきたピアノを辞め、楽理科に転がり込んだ私は、そこで様々な音楽に出会います。古代西洋の教会音楽、アジアや中東の民族音楽、そしてジャズやテクノ、現代音楽まで...。各々に魅力的なそれらの音楽に囲まれて、雅楽への恋心も、ピアノへの拒絶感も、次第に和らいでいきました。

そんな中、ひとつ面白い授業がありました。船山隆教授の"音楽美学"です。「音楽的時間とは...」とおっしゃりかけて、そのまま数分間無言になってしまうような先生の授業は、独特な(時に眠気を催す...)時間でしたが、そこで教わった美学や音楽はとても洗練されたものでした。そして、その授業関連で行ったあるコンサートから、私はその後の進路に関わる決定的な影響を受けることになります。

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それは"クロノスカルテット"という、アメリカの現代音楽専門カルテットのコンサートでした。同時代作曲家の最新作を、照明やエレクトロニクスを駆使しつつ初演するコンサート。そこには、経験したことのないスリルとかっこよさが満ちていました。そして、その麻薬のような音楽に取りつかれた私は、以後、夜な夜な現代音楽のコンサートに通うようになります。作曲科の友人の作品を初演させてもらう、という活動もその頃から始めました。 

現代音楽には、本当に様々なものがあります。かっこいい系、不響和音の嵐系、理解不可能系...etc。唯一の共通点は、各々がそれなりの美学を持ってこれまでになかった音楽を目指している、という点でしょうか。新しい響きに耳が驚き、思考が更新される...、そんな刺激的な体験が現代音楽の魅力かもしれません。

今回の音源「変奏2」は、右手と左手が違う調性で演奏される"複調(ストラヴィンスキーミヨーも使用した技法)"の音楽です。クラシック的に聴けば不協和音の連続...。私にとってはたまらなく魅力的なのですが、みなさまいかがでしょうか?

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