ピティナ調査・研究

ピアノ・ブロッサム再開にあたって

ピアノ・ブロッサム

ピアノ音楽の興隆を担った1810年代生まれの作曲家たち。その100人のピアノ曲を一曲ずつ紹介するこの企画は3年前に一旦スタートしたものの、僅か12名で中断のやむなきに至った。期待されていた方々には大変申し訳なく、お詫びしたい。

 これだけの作曲家から、それぞれたった1曲を選びつつ、シリーズとして雑多な印象を与えないようまとめるには、世代全体を括る何らかのシステムが必要なことは明らかだった。

 当初はショパンの「前奏曲集」をモデルに、全調網羅を意図して進んでいたことに気付かれただろうか。しかし、選曲の厳しさと同時にこのやり方が何か間違っていると感じ、続けることができなくなった。スタートの時点で総ての選曲が決定できていなかった最大の敗因であろう。

 各作曲家の個性を明らかにした上で、ロマン派ピアノ音楽の第一世代としての共通性を伝えるにはどうしたらよいか。作曲家にはピアニストが多いが、そうでない人もいる。Op.400を超える人もいれば、オペラなどがメインでピアノ曲は5指に満たない人もいる。この100人の創作史を把握するだけでも容易なことではなかった。調査と模索を重ねた結果、行き着いたのが今回のプランである。

 それは当時流行していたピアノ曲の代表的題材、曲種を25のカテゴリーとして設け、それに各4名の作曲家を当て嵌めていくというものである。つまり、同一のテーマで4人の作品を比較することができる。100人の作曲家を何とかきっちり25のカテゴリーに振り分けてみたが、それだけでは駄目であった。似たような曲調が集中するカテゴリーが生じたからである。こうして「春」や「朝」は却下となった。かくしてカテゴリー内での同じ調の重複を避け、しかもその作曲家の本質をストレートに表明している作品を配置するプランに、ようやく辿り着くことができた。ただ、現時点で3曲の未入手作品があり、これらの調性や内容が不明なため、この部分のみが未確定となっている。そのうちの1つは現地の図書館に赴いたにも関わらず、図書館ではコピーの許可が出せないといわれるものだった。国の該当機関に申請の必要があり、その他、図書館毎にさまざまな制約があったりして、道は平坦ではない。だが、これら3曲については大勢に影響はないと考え、スタートすることにした。

 前回のプログラムで取り上げた曲もいくつか入っているが、初回は捲土重来を期してグノーの「アヴェ・マリア」で再開したいと思う。この曲を含むカテゴリーは「祈り」である。実際、何が起こるかわからない世界の情勢の中で、今最も求められるのは「祈り」であろう。それは単なる「望み」ではなく、ポジティヴで大きな力であると信ずる。まずは、当企画が完結できるよう祈りたい。

 また、今回は諸般の事情により、画像無しの音源のみとなるが、いずれも録音は無編集の通し演奏である。特に作曲家本人のピアニズム(ピアニストでない作曲家は作品献呈者等)に可能な限り迫ってみたい。公開はカテゴリー毎に順次行っていく。

2016.2.3 金澤 攝