ベヒシュタインレビュー
世界の3大ピアノメーカーといえば、多くの場合スタインウェイ、ベーゼンドルファー、そしてこのベヒシュタインを指します。
19世紀末から20世紀初頭にはトップメーカーとして認知され、初期の日本国産ピアノはベヒシュタインのコピーであったり、設計上大きな影響を受けたものが多いそうです。
アタックが遅れるように感じるベーゼンドルファーとは逆に、音の立ち上がりが早く、音が透き通った印象です。深みのある重厚な音は特徴的ですが、整備状態の良い現代のベヒシュタインはとても弾き易く、普段国産ピアノやスタインウェイといった演奏機会のより多い現代ピアノで練習している方でも、それほど違和感無く弾くことができるのではないかと思います。
一方ベヒシュタインの楽器は戦前のモデルも何台か弾く機会を得ましたが、それらは更に明確な特徴をもったピアノです。ピアノの音に対して 「透明感のある音」という言い方があるならば、それはこの頃のベヒシュタインの音、と言い切れるくらいです。例えばダンパーペダルを踏んだまま半音階をかき鳴らすと、他社のピアノでは絵の具を混ぜすぎて黒くなる如く、混沌とした音になります(良し悪しはともかく)が、ベヒシュタインの場合はそれぞれの音が粒を残したまま、透き通って響くような印象を与えるように思います。私はその時の響きから、精密なステンドグラスを通った複雑で美しい光彩をイメージしました。ドビュッシーが残したとされる言葉で「ピアノ音楽はベヒシュタインのために書かれるべきだ」というものがあるそうですが、確かにドビュッシー作品とはとても相性が良いと思われます。
ベヒシュタインの古いモデルは現代のものとはかなりの差があります。現代のピアノしか弾いたことのない方が、古いベヒシュタインを初めて弾く時、その感覚の違いに戸惑うのではないかと思います。とはいえドビュッシーが活躍していた当時、ベヒシュタインの音といえばもちろん珍しい個性などではなく、 ピアノという楽器を代表する響きであったはずです。ピアノの設計は既に100年以上前に完成されたと言われますが、作曲や演奏に音楽的価値とは別に時代ごとの様式があるように、楽器作りにも時代固有の様式があるように思います。ベヒシュタインを始め歴史ある多くのメーカーもそれを敏感に感じつつ、あるいは無意識に影響されつつ、歴史を重ねていくのだと思います。また、勿論世界のコンサートホールの9割以上に納入されている、というスタインウェイピアノの影響を無視することはできません。
現代のベヒシュタインは透明感があり、強靭な音という特徴を残しつつも、時代ごとのニーズに合わせて変遷しつつ、堅実な作りがされていると思います。しかし状態の良い古いベヒシュタインにも触れる機会を得られれば、現行機種に関してもより深く、そのコンセプトを理解することが出来るように思います。
ベヒシュタインはどのモデルも一級品の風格がある音と、高い操作性を持っていますので、高価ではありますがお勧めできます。個人的に魅力を感じたのはバランスの良いグランドのB型、そしてアップライトのコンサート8です。アップライトのトップモデルであるコンサート8は古い時代のベヒシュタインの特徴を良く残しているように思います。また小型のグランドピアノを超えるような強靭で深い音を持っています。
グランド | ||
機種名 | 奥行き | 国内価格 |
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A.160 | 160cm | 4,100,000 |
A.190 | 190cm | 4,400,000 |
L-167 | 167cm | 6,500,000 |
M/P-192 | 192cm | 7,800,000 |
B-210 | 210cm | 9,100,000 |
C-232 | 232cm | 11,000,000 |
D-280 | 280cm | 16,000,000 |
アップライト | ||
機種名 | 高さ | 国内価格 |
ミレニアム116 | 116cm | 1,800,000 |
クラシック118 | 118cm | 2,000,000 |
コントゥア118 | 118cm | 2,150,000 |
クラシック124 | 124cm | 2,700,000 |
エレガンス124 | 124cm | 2,900,000 |
コンサート11 | 124cm | 3,500,000 |
コンサート8 | 131cm | 3.900,000 |
- 価格は2004年11月時点のものです。
実方 康介(2004/11/12)