カワイ・グランドピアノRX/SKシリーズレビュー
カワイは通算250万を超える生産台数を誇る国産ピアノメーカーの雄です。日本に住む人がピアノを選ぶ際には、ヤマハに次いで選択肢にあげられる機会の多いメーカーではないでしょうか。今回はグランドピアノを中心に取材しました。
まず、RXですが、これはヤマハのモデルで言えば、モデルC1~7に相当する標準的なラインナップです。サイズや価格帯の区分はCシリーズとほぼ合致します。そのためCと比較して評価するのが容易です。実際に購入する場合もそれに近い方法で検討するケースが多いでしょう。
RXシリーズは調整の仕方にもよりますが、C型に比べるとどのモデルもやや重量感のある音が特徴となっています。またヤマハのピアノが全音域で均質感をともなう発音をするのに対し、カワイのピアノは高音部と低音部の音質にやや響き方の違いを感じます。これは中高音域でメロディを弾く際の弾き易さにつながっている思います。RXシリーズには電子音を利用した消音機能つきのピアノも用意されています。その電子音モードにおいても同じ音作りがされているところが面白いです。カワイの音作りの方向性がよく見えるような気がします。
カワイ・グランドピアノには「シゲル・カワイ」という高級シリーズが存在します。今回はフルコンサートモデルであるEX以外のすべてのモデルに触れることができました。これは操作性、音色の変化を持つたいへんレベルの高い楽器です。最小モデルのSK-2は、私が触れたものは通常と異なるセッティングがされていたそうなのですが、180cm以下のサイズのピアノとしては驚くほど豊かな低音を響かせていました。弱音から強音までを自在に出すことのできる操作性や、様々なタッチの違いに反応する繊細さなどはその価格から想像するものとは大きく異なります。特にSK-6以上の大きさの楽器に関しては、ほぼ倍の値段がつけられた世界の一流メーカーの楽器に劣らないと思えました。
少し気になるのは、まず価格設定。SK-2や3、5までは非常に安価で、お得感があります。しかしSK-5と6の間にはかなりの価格差があります。サイズがそれほど変わらないだけに、この価格設定は理解されにくいかもしれません。弾けばその価格差には納得できましたが(決してSK-2~5が性能が低いのではなく、6以上が高品質という感想です)。また欧米では珍しくありませんが、フルネームの個人名を冠する商品は日本ではあまり馴染みがありません。それだけに「シゲル・カワイ」のモデル名には自信と気合が込められているだろう、というのは分かります。ですが当初はやや違和感を感じてしまいました。
店頭で分かったことは以上のとおりです。どのピアノでもそうですが、耐久性を知ることはは店頭の取材では難しいです。カワイのピアノには、激しく動く部品をカーボンファイバーなどの新素材にするなど、経年劣化を押さえるような工夫もされているとのことです。それはこのような高いグレードのピアノにはまだ珍しいことですが、新素材の使用がどのように音の違いに反映されているかは正直わかりませんでした。まだ歴史の浅いモデルですので、評価はこれから、ということもできるかもしれません。ですが名器となるだけの資質は十分に備えているという感想を持ちました。
ピアノ選びはそのメーカーが示している楽器の方向性にどれだけ共感と信頼を寄せられるかどうかによって決定します。カワイのピアノにも明確な方向性があり、それはSKシリーズの高い品質において特に顕著なものです。ぜひ一度触れてみることをお勧めしたい楽器です。
機種名 | 奥行き | 価格 |
---|---|---|
GM-10 | 150cm | 1,050,000 |
RX-1G | 164cm | 1,260,000 |
RX-2G | 178cm | 1,417,500 |
RX-3G | 186cm | 1,732,500 |
RX-5G | 197cm | 1,942,500 |
RX-6G | 212cm | 2,362,500 |
RX-7G | 227cm | 2,782,500 |
SK-2 | 178cm | 2,013,900 |
SK-3 | 186cm | 2,328,900 |
SK-5 | 197cm | 2,643,900 |
SK-6 | 212cm | 4,586,400 |
SK-7 | 227cm | 5,426,400 |
GS-100 | 276cm | 7,035,000 |
EX | 276cm | 10,395,000 |
- 価格は2004年9月時点のものです
実方 康介(2004/9/24、改稿9/25)
- 取材協力 カワイ・ミュージックショップ青山