ピティナ調査・研究

第12回 昔のピアノには、どんな魅力があるんだろう?

みー子さんのピアノ・アレ・コレ
【夏休み最後の週末】もう夏休みも終わりだねぇ・・・ねぇねぇ、みんな、どっか行った?まさおくんは?オレは蒸し暑い日本脱出だぜ。家族でウィーンに出かけてさ、いろんなコンサート聴きに行ってきたんだ。すご~い!セレブだね~!ふさこはね、親戚のおじさんと一緒にボランティア活動やったよ。海辺のゴミとか拾ったの!おー!やるなぁ!ふさ子!みー子ちゃんは?あ、毎年、夏の終わりはおじいちゃまの家にお泊りにいくのよね?あ、うん。ま、そなんだけどね。あれ?うれしくないの?いつも、おじいちゃまに会えるの、楽しみにしているじゃない、みー子ちゃん。それはそうなんだけどさ。秋にピアノの発表会あるじゃん?だから・・・ちょっとね・・・へー。オマエでも発表会のこと心配するんだ!でも、じーちゃんにもピアノがあるって、前に自慢してたじゃんかよ・・・あるよ。あるんだけどさ。・・・もういいよ。じゃ、みー子、パッキングとかあるから帰る。じゃあね!ちゃお!へんなやつ!  ・・・みー子ちゃん・・・夏休み、すごくピアノがんばってたのは知ってるけど・・・どうしたんだろう?・・・明日から、おじいちゃまのおうちかぁ・・・やぁ、みー子さん。いつも、おじい様の家にいくの、楽しみにしてたよね?うん。おじいちゃまに会えるのはうれしいけど、ちょっと心配なことがあってさ。え、いったい何が心配なの?みー子、秋の発表会に向けて、夏はけっこうピアノがんばってるんだけど、おじいちゃまの家のピアノが・・・なにか問題あるのかい?もうねぇ、メッチャメチャ古いの!古すぎなの!1843年に作られたやつなんだって!ええええ!す、すごいピアノだねぇ、それ!外国のさぁ、昔のやつだよ?プレッツェルとかそんなような名前の・・・それを言うなら、きっと、「プレイエル」だね!フランスのピアノメーカーだ。そなの?ま、とにかく、そんな古いピアノのじゃみー子あんまり弾きたくないよ!みー子は何でもピッカピカの新しいものが好きなんだから!うーん。もちろんピカピカの新しい楽器は素敵だよ。だけどね。昔のピアノを弾けるなんて、すごくいいチャンスなんだよ。は?チャンス?なんで?そのピアノって、ショパンが生きていた頃に作られたピアノだ。もしかしたら本人が弾いたかもしれない!えっ!ショパンって、あの「小犬のワルツ」とかのショパン?!ほんとう?おおいにありうる。となると、ショパンが演奏したり、作曲したときに、どんなピアノの音がしていたのかがわかるじゃない?へ?ちょっと待って、キーマン先生。ピアノはピアノじゃん。どんなピアノでもピアノの音がするんじゃないの?そうとも言えないんだ。ショパンが生きていた200年くらい前のピアノは、今のピアノとしくみが違っていたからね。しくみが、ちがうですって?!今のピアノのように大きな音は出ないし、鍵盤の数も今よりすくなかった。同じ音を早いスピードで連続して鳴らすようなこともできなかったんだ。えぇ、じゃあなんだか、やっぱり、古いピアノって・・・少ないとか小さいとかいうと、ちょっとさみしい感じがしちゃうかな?でもそういうことじゃないんだ。とても繊細で内に秘めたような香りのする音。そんな風にもいえるね。繊細な香り・・・?あらま。なんだか美しいわ。ショパンが大好きだったプレイエルのピアノって、とてもきれいに音が混ざり合うんだ。特別な「第二響板」っていう板がついていて、音に香りがついたように鳴るんだよ♪へぇ。つくられた時代によって、ピアノって音が違ったりするんだ。今のピアノより音量は出ない。でもそれで強い音を弾くとかえって魂の叫びみたいに響くかもしれない。弱い音はもっと小さく鳴って、哀しみや、はかなさが音になる。楽譜に書いてあるpやfの向こう側が見えてくるみたいだね。楽譜の向こう側?ふ、ふかいっ夜はろうそくの明かりの中で、ショパンはそういう繊細な音を聞いていたんだ。作曲家の感じたものや、表現しようとした世界を教えてくれるんじゃないかな。そっかぁ。なんだかロマンチックだね。この夏、みー子さんはおじいちゃまのピアノからいろんな響きを聞き取って弾いてごらん。音楽のイメージが膨らんで、新しいピアノを弾くとくにもいろんな音楽のアイデアを持てるようになるよ。なるほどねー。じゃあみー子、200年前のフランスの貴婦人になりきって弾いてみる!ママにフリフリのワンピース買ってもらおう!あはは、タイムスリップだね!おじいちゃまのピアノ、大切に弾いてあげてね!古いピアノのコンサートもあるから、いろんな楽器を聴いてみるといいね♪ かくれキーマン