ピティナ調査・研究

第9回 楽譜って、どうして見なくちゃいけないの?

みー子さんのピアノ・アレ・コレ
(学校の音楽室にて)ねーねーふさ子は今ピアノ、何習ってるの?あ、今はねぇ、「トルコ行進曲」だよ。 すごーい!あたしその曲大好き!こんな感じのやつだよね? すごーい、みー子ちゃん!楽譜見ないでも弾けるの? うん、だってその曲、超有名じゃん?覚えちゃってるし。いとこのおねえちゃんも発表会とかで弾いてたんだ。ま、みー子も近々習うんじゃないかな。わー、そしたら、すぐマルもらえるね。あたしなんてなかなか進まなくって・・・ あれっ、まさお、何やってんの? ん?あ。オレ、今日これからレッスンなんだけどさ。最終チェックだよ。 ふ〜ん。じゃ、楽譜なんか見てないで、弾いた方がよくない? いや、けっこう。楽譜を見て、いろいろ考えたい段階だから。 え?なにそれ。ピアノ弾かなきゃ意味ないじゃん。 ばっかだなぁ。楽譜をきちんと見ておくのも大事なんだよ!じゃ、もう行くよ。チャオ なんだあいつ?楽譜ながめてたって、うまくなるわけないじゃんね。みー子はときどき、楽譜なくっても弾けちゃうもんね。でも、大事って、何がそんなに大事なんだろう・・・? ***** ただいまぁ。キーマン先生、みー子ってすごいと思わない?!まだ習ってない曲でも、知ってたら弾けたりするし、好きな曲だと、楽譜なんか見なくても弾けちゃったりするんだー。 うん。発表会でほかのお友達がたくさん弾いてる曲とかは、よく知ってるもんね。 そうなの!でも今日学校で、まさおのヤツ、楽譜ながめてばっかりいたんだよ。「大事」とか言っちゃって。でも弾かなきゃ意味ないじゃんね。う〜ん。指を動かすことは、もちろん大切。でも、楽譜を「大事」に考えるっていうのは、賛成だな。 は?なんで?楽譜なんか、そんなにジロジロ見なくたって、弾ければいいじゃん!知ってる曲なら、いちいち音符を見る必要ないし、めんどくさいよ。たしかにね。みー子さんみたいに、知っている曲ならすぐ弾けちゃう、っていうのは、一つの才能だよね。感覚がするどいっていうか。でしょう?みー子、耳で聞いてわかっちゃうんだ。だから時々、楽譜なんていらないって思っちゃう。うん、でもちょっと待って・・・そうだな、みー子さん、すいり小説とかは好き? あ、うん。みー子、名探偵ホームズ読んでるよ。あと、ママと2時間ドラマとかよく見てる。 ああいう物語の中の刑事さんって、人に話を聞いたり、写真とか、足あととかを手がかりにして、事件を追っていくよね。犯人がもうわかっているお話でも、刑事さんがどうやって、ナゾをといて行くのかが楽しみだよね。 そうそう。ときどきアッとおどろくような証拠を発見したり、答えをひらめいたりするんだよねー。それは、きちんと聞き込み調査をしたり、現場の物を一つ一つちゃんと見てるからできるんだよね。実は、ピアノを弾くときの楽譜にも、同じようなヒミツがかくされているんだよ。 えっ!なにそれっ! みー子さんは、曲をぜんぶ知っている。でも犯人、いやちがうな、作曲家が残した足跡やヒントみたいなものは、楽譜の中にあるんだ。だからそれを一つ一つ見落とさなければ、事件の真相みたいに、その曲のことがわかっちゃう!え・・・そうなの? たとえば、dolce(ドルチェ)って楽譜に書いてあるのに、見ないでなんとなく弾くのと、「あ、ドルチェだから、優しく弾いてみようかな」って思って弾くのとじゃ、音がぜんぜんちがってくるんだよ。そうかなぁ。耳で優しい音を聞いてたら、できそうな気がする。じゃあ例えば、こんなことはない?下から上に音がスーッと並んでいくメロディーで、弾きたいのに、どうしても途中で止まっちゃう、とか。 あ、たまにあるね。頭では続きがわかってるのに、つっかえちゃうの。 それはね、楽譜に書いてある指番号を見ていなくって、途中で指が「足りない!」事件だね。でも、指番号っていう証拠をちゃんと押さえれば、事件の真相に近づく。 おぉう。なるほど。なんかわかってきたかも。 音が乱暴に切れてしまう「ぶっちぎれ」事件は、スラーという証拠をおさえなくちゃならないし、うまくリズムに乗れない「だらだら」事件は、アクセントやpやfなんかの現場検証も必要だ。わぁ。なんだか楽譜がミステリーの舞台みたいに思えてきたよ!だとすると、ちゃんと見なくちゃ真相がつかめないね!ミステリーばかりというわけでもない。楽譜にとつぜん現れる#や♭の臨時記号。耳で音は知っていても、目でも探してごらん。たとえば「エリーゼのために」の出だしは? ミ♯レミ♯レミシレドラ。あ、最初の二つのレには、♯が付いてる。 もしここに♯がなかったら、音楽はあまり素敵じゃなくなるよね?臨時記号は、「ここは面白いところだよ!」って、教えてくれてるんだ。そうやって楽譜を見ると、音楽の表情がすごくよく見えてくるよね。あ、そっかぁ。楽譜にいろんなヒントがかくれてるって意味がわかってきたよ! 知っている曲でも、なんとなく弾いてるだけじゃ、人を感動させるのは難しい。でも楽譜に書かれていることを一つ一つちゃんと手がかりにしていくと、演奏にたくさんの表情が付くんだ。どうせなら自分だけ楽しいよりも、聞いてる人も感動してくれる演奏がいいもんね。よし!今日から楽譜でいろんなヒントを探しちゃうぞ!じゃ、今からママと刑事ドラマ見て研究してくる!おやおや!ドラマじゃなくて楽譜だよ〜っ!みー子さ〜ん!かくれキーマン
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