第18回 二本柳奈津子先生
二本柳奈津子先生は、大阪府豊中市の閑静な住宅街にあるマンションにお住まい。レッスン室はヤマハ・アビテックスのフリータイプの小さな防音室に、グランドピアノが2台収められた本格的なもの。
昨年2003年のピティナ・ピアノコンペティションE級金賞に輝いた小塩真愛さん(受賞当時中1)のレッスンを拝見し、その成長の様子を見てみようという趣向である。
この日のレッスンは、ドビュッシーの版画から「雨の庭」。すでにステージでも弾いたことのあるこの曲は、仕上げの段階だった。
弾くことに関して具体的な方法の指示や提案はなく、専らイメージの形成に当てていく。この曲の背景について、できるだけ生徒に考えさせ、イメージをふくらませようとしつつ、簡単には言葉に置き換えられない生徒に対して、少しずつ誘導しながら考えさせていくレッスンだ。決して演奏が急変することはないかも知れないが、曲の仕上がりを着実にしていく。
この日はまず、リストのハンガリー狂詩曲第8番 嬰ヘ短調「カプリッチョ」から。前回のドビュッシーは爽快なパッセージが中心となる音楽で小塩さんの得意そうな1曲だったが、今回のリストは一転して濃厚な表現から始まる音楽。レッスンし始めて間もないこの曲は、フレーズの細かい部分を念入りにチェック、何度もやり直しながら表情を練り上げていく。
こうした段階においても、奏法の具体的方法の指示よりも音楽的な感じ方を追求して表情を作っていこうとする。レッスンは徐々に熱が入っていった。
この曲は、3月27日(土)東京の第一生命ホールで開かれた第27回ピティナ・ピアノコンペティション入賞者記念コンサートのマチネ第2部で演奏され、好評を博す。
この日のレッスンは、ショパンのスケルツォ第2番。この曲も3月27日(土)東京の第一生命ホールで開かれた第27回ピティナ・ピアノコンペティション入賞者記念コンサートのソワレで演奏するための仕上げで、各部分の細かい指導が続いていった。
ここでも指導者のイメージや方法を一方的に生徒に与えるのではなく、演奏者はどのような演奏をしたいのかを確かめ、常に考えさせる方法を取っている。指導者が客観的に聴こえる現象を生徒に伝え、問題点を呈示するが、その解決方法を一方的に与えるのではなく、自分で整理して明確にさせようとするあたりが、とても印象的であった。
昨年のピティナ・ピアノコンペティションE級で金賞を得てから、小塩真愛さんは次々とコンサートに出演したり、コンクールに挑戦したりして、次々と新しい曲にチャレンジしている。
明日2004年6月5日(土)18:00~は、大阪のザ・フェニックスホールで開かれる「エリーザベト王妃国際コンクール優勝S.V.エッカードシュタインピアノリサイタル&PTNA入賞者によるプレ・コンサート」で、また別のレパートリーを披露する予定。
そして、6月21日からアメリカ・ソルトレイクシティで開かれる、ジーナ・バックアウワー国際コンクールジュニア部門(11~13歳)にも録音審査が通過し、参加する予定。今後の成長が大いに期待されている。(取材:諌山 隆美)
ありがとうございました。