第2回 二十歳から三十歳代の経験
ピアノ指導を始めた 20 代の頃は指導者の数よりも生徒の方が多く、容易に生徒が集まりました。しかし、沢山集まっては辞めていく~怒ったら辞めていく~等出入りも多かったように記憶しています。そんな中、徐々に指導者としての認識に気づいたのは 30 代になってから。そのきっかけの一つが、ピティナ・コンペティションに生徒を出場させた事でした。
当初、自分の好き勝手に指導していましたが「これではいけない」と気付いたのです。生徒をコンクールに参加させる事で、私自身も大きな影響を受けました。
コンクールを通して「ピアノだけではなくステージマナーやルールも学ばなくては」と思い始めました。今でこそこのような事を言っていますが、20 代の頃はこんな事思いもしませんでしたし、教えてくれる人もいませんでした。
卒業してすぐに指導者になると、みんなから「先生、先生」と呼ばれます。「勘違い」する人も多いですし、私自身も例外ではなかったように思います。
しかし、指導者としてやっていくには、ピアノの技術はもちろんの事、それに付随する色んな知識を身に付けなければなりません。私が初めて挫折を味わったのは、ピティナのコンペティションで全員が予選落ちしてしまったことでした。今考えると信じられないような点数をもらってしまい、勉強不足を認識致しました。
ピアノ指導以前の重要性も改めて考え、「ピアノを教えるための土台がないとダメなのだ」と意識するようになりました。
私は性格上、はっきりものを言うタイプですので、20代当時は後先考えず発言して、師匠や保護者から説教されることも少なくありませんでした。腹を立ててしまうこともありましたが、年齢を重ねる毎に、その当時言われて来た事への感謝と反省が身に沁みています。
30代になり多くの経験を重ねていくうちに、保護者の方への感謝の気持ちがさらに増しました。
その時ようやく保護者の母親としての気持ちが理解できるようになり、自分の立ち位置が大きく変わっているという認識がありました。立ち位置が変わると考え方も違ってきて、コンクールでも何が悪かったのかを違う視点で見られるようになり、「ただ演奏すれば良いというものではない」と気づかされました。今となって思えば初歩的なことも、自分自身が分かっていませんでした。
分かっていなかったからこそ必死になってやっていましたし、今思えば恥ずかしい指導をしていたと思います。
保護者、生徒を知るというのは、教室に通い出してくれてわかっていくもの。体験レッスンの面接では、私の教室の保護者、生徒としてという目線で見ていきます。
ただピアノが上手になりたいというだけではなく、その背景には何があるのかを知りたいですし、その生徒が一見、天真爛漫のように見えたとしても、どこか影があるような生徒もいるし、「学校でいじめられていないか、いじめていないか」など、気にかけておく必要があります。保護者に関しても「家庭が円満なのかどうか」は大事な要素です。
過去にもその事が役に立った事もありました。