ピティナ調査・研究

No.4 ヴァージナル(1597)

No.4 ヴァージナル(1597)
解説

フェランテ・ロッシ(Ferrante Rossi,1580-1597)は、父アンニバル・ロッシ(1542-1595)と共に当時ミラノで有名なヴァージナル製作家であった。
ヴァージナルはチェンバロと同じアクションを持つ小型撥弦鍵盤楽器。
横長で、弦は奏者から見て横向きに張られ、ケースは多角形のものと長方形のものがある。チェンバロ、スピネットと並んで16世紀イタリアでは数多く作られた。ハープを寝かせたような多角形のものは特にアルピコルドとも呼ばれる。ロッシの楽器も含め、16世紀イタリアにはこの多角形のものが多い。

これらの撥弦鍵盤楽器の名称を明確に定義づけることは困難だが、一般的にグランドピアノ型の大きなものをチェンバロ、小型で弦が奏者からみて横に張られているものをヴァージナル、弦が斜めに張られているものをスピネットと呼ぶ。ヴァージナルは奏者から見て手前側に低音弦が張られている。 ロッシ親子の楽器のようなイタリアのヴァージナルは鍵盤が本体の箱より前に突き出しており、フランダースやドイツのものは、鍵盤が本体の中に収まっているのが特徴。 16世紀後半から17世紀前半にかけて、イタリアのヴァージナルは海の向こうのイギリスへ沢山運ばれ、W.バード(1543?-1623)やJ.ブル(1563?-1628)らに代表されるイギリスのヴァージナル音楽の確立に貢献した。エリザベス王朝の頃のイギリスでは、その形状にかかわらず、鍵盤楽器全般をヴァージナルと呼んでいた。軽やかな響きは舞曲などの演奏に適している。

このF.ロッシ作のヴァージナルは簡素な佇まいだが、父A.ロッシの作ったヴァージナルの中には、鍵盤、響板、側面等一面に宝石をちりばめた贅の限りを尽くしたものもある。(解説:宮崎 貴子)

動画で解説を見る(演奏が聞けます)
楽器種別
  • ヴァージナルVirginal
製作者・製作年
  • フェランテ・ロッシ(ミラノ)Ferrante Rossi(Milano)1597年
概要
  • [全長] 153.5cm
    [鍵盤数] 50鍵
    [音域] C/E~f3
  • 取材協力:浜松市楽器博物館
動画
解説
試奏
関連情報
同時代の代表的な楽曲

このヴァージナルの制作年代は1597年。浜松市楽器博物館が所蔵する最古の鍵盤楽器だそうです。一方ピアノ曲事典に登録されている作曲家のうち、最も古い世代の人物は1543年生まれと推定されるウィリアム・バードです(2015年6月現在)。バードが活躍した当時のイギリスではヴァージナルが流行していました。また16世紀末といえば、ルネサンスからバロック時代への過渡期にあたります。この楽器の甘い音は初期バロック時代に活躍したフレスコバルディの音楽と相性が良いかもしれません。(文責:ピティナピアノ曲事典編集部)

お勧め曲
資料
この楽器を見られる場所
〒430-7790 静岡県浜松市中区中央3-9-1
9:30~17:00(休館日