ピティナ調査・研究

第3回 松本あすかアーティストスコアブック PIANO ESPRESSIVO

◆ 解説

テーマは"グルーヴ感"。様々なジャンルの音楽を弾きこなす松本あすかさんのデビューアルバムCD、『PIANO ESPRESSIVO』のマッチング楽譜集です。
耳なじんだ名曲の数々が、あすかさんの編曲によって新鮮に生まれ変わり、こんな風に自在に音を操れたら...、そんな思いを抱きます。あすかさんの音楽・楽譜との付き合い方がわかるインタビュー記事や、各曲についての解説も充実。(インタビュー記事を一部ご紹介します。⇒こちら
あふれる才能と、幼い頃から音楽を楽しみ、楽譜を読み込んできた素地が生みだした作品集です。

  • 「グルーヴ」は、「ノリ」や「ハマリ」などのリズム感覚を指すロックやジャズなどで用いられることば。
著者名 :松本 あすか
3歳よりピアノを始める。ピティナ・ピアノコンペティションA1級金賞(6歳)。プレミオモーツァルト国際コンクールに日本代表として参加、最年少第3位及びプレミオモーツァルト賞受賞(7歳)。イタリア国営テレビ「ゼッキノドロオ」メインゲストとして招待を受け渡伊、生放送にて演奏(8歳)。その後ヨーロッパを中心に演奏旅行、各国で好評を得る。ウィーン音楽コンクールインジャパン小学生の部第3位(12歳)。14歳でソロリサイタルを府中の森芸術劇場にて開催。日本クラシック音コン中学校の部第2位(15歳)。カール・ツェルニー国際コンクール(プラハ)第2位(16歳)。ピティナコンチェルト部門最優秀賞。
18歳のとき、より広く音楽を勉強するためにクラシックピアノから離れ、以後5年間は様々なジャンルのアーティストのサポートや作詞作曲活動、クラシック演奏家向けのジャズアレンジ等を行う。 23歳のとき、自分なりのクラシック音楽への関わり方に確信を持った上で、再度クラシックピアノに戻り、ピティナ・ピアノコンペティショングランミューズ部門A1カテゴリーにてロシアの鬼才ピアニスト、カプースチンの作品を演奏し第1位を受賞。
クラシック音楽にグルーヴ感を吹き込むその演奏スタイルは、クラシックの枠組みに収まることなく、ジャンルを飛び越え、聴くものに新たな感動と感覚を呼び起こさせる。各ジャンルの橋渡しを担うであろう今後の活躍が期待されるピアニストである。オフィシャルウェブサイト
◆ 収録曲・コンテンツ

演奏:松本 あすか

曲名 映像
1. J.S.バッハ:インベンション~primo~ 視聴
2. ブルグミュラー:アラベスク~赤い靴~
3. ムソルグスキー:展覧会の絵~one love~ 視聴
4. ベートーヴェン:エリーゼのために~ROSSO~ 視聴
5. 松本あすか:サニーサイドアップル#1 視聴
6. ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番第1楽章~Fox Chase~ 視聴
7. リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調(松本あすか版) 視聴
8. モーツァルト:トルコ行進曲~Tao~
9. [ボーナス・スコア1]松本あすか:サニーサイドアップル(solo楽器用楽譜)サニーサイドアップル
10. [ボーナス・スコア2]モーツァルト:トルコ行進曲~Tao~(solo楽器用楽譜・ト音譜表)
11. [ボーナス・スコア3]ブルグミュラー:25のエチュードより"バラード"(連弾バージョン)
◆ 巻末:「松本あすかインタビュー」 より

あすかさんの楽譜との付き合い方について教えていただけますか?

私の好きな「楽譜取り組み方法」のひとつとして、「色鉛筆とシール作戦」があります。この作戦は、譜読みの曲や、指の練習に煮詰まった時に(笑)決行されます。鍵盤から一度離れて、お気に入りのカフェに行くのですが、持ち物は楽譜と色鉛筆と、シール。曲全体の段落構成をみて、場面転換ポイントに色鉛筆でマークを書き、それぞれの段落の登場人物(声部)や、その関係性、コードネームを書き入れていく。「楽曲分析」というより、宝の地図を好きに完成させていく感じです。
不思議なもので、鍵盤から離れた場所で楽譜を眺めていると、指を動かしている時には気がつかなかった色んな音楽の景色や音の絡み、関係性が見えてくることがあります。そして、気付いたことをどんどん、色鉛筆で書き込んで行く。「ココかっこいい!」「木管みたいな音質」「オクターヴの共振!」「フレーズ追いかけっこ」・・・。そんな簡単な単語ばかりですが(笑)。そして、感覚的に特に「好き」と思った音、フレーズ、和声に、特別なシールを貼る。・・・とここまで来て譜面を見直すと、脳内イメージの音楽がより立体的に彩られてきて、早く鍵盤で鳴らしてみたくなって帰宅します(笑)。皆さんも是非一度試してみてください。

自分自身で作編曲をするようになってから、偉大な作曲家達の譜面を見たときの見え方が少し変わって来たように思います。2次元の楽譜にどれだけ4次元の世界を伝えられるか。楽譜を「書く」とは「描く」なのかもしれない。そしてそれが、読んでくださった方に縛りを与えるものではなく、それでいていかに読み手各自の自由なイマジネーションに確信を持つための手助けができるか・・・。今回のことをきっかけに、描くほうも読むほうも、もっともっと勉強して楽譜の世界を拡げていきたいですね。(108頁掲載)