ピティナ調査・研究

第2回 バスティン先生のお気に入り レベル4

◆ 解説

「音楽が人生の友となるように・・・」との願いのもと生まれたバスティン・メッソード。著者であるバスティン夫妻の「楽しみながら上達する、上達するから続けられる」という指導理念は、「数こなし式・かみくだき式・逆算式」を織り込んだ約3,000曲に取り入れられています。
「バスティン先生のお気に入り」シリーズは、音楽を通して感情表現をし、音楽的に大きく成長するための補充教材として位置づけられ、バスティン以外のメソードで学んでいる方にとっても取り入れやすい教材です。 イマジネーションが膨らむ題材と挿絵は、子どもにも人気があり、発表会やオーディションの課題曲として、またカバレフスキーやバルトークの教材にとりくむ前の副教材としても、おすすめです。

著者名 :ジェームス・バスティン/ジェーン・スマイサー・バスティン(日本バスティン研究会訳)
◎ジェームス・バスティン(1934-2005)
ピアノ教育者、音楽家。サザン・メソディスト大学にて学士号、修士号を取得。
◎ジェーン・バスティン
ステファン大学・バーナード大学を卒業後、東部の名門コロンビア大学大学院で修士課程を修了。 ジェームス・バスティンとジェーン・スマイサー・バスティンは1960年にニューオーリンズで出会い、スマイサー・アンド・バスティンとしてピアノ・デュオのユニットとして活動した。さらに、ジェームズはコロンビア認定の伴奏であり、リチャード・タッカー、ジョン・アレクサンダーなどの伴奏者としても活躍。この頃から、ジムとジェーンは自分の生徒たちのために作曲も始めた。これが、その後多くのピアノ指導者や生徒たちに多大な影響を与えることになる「バスティン・メッソード」の始まりである。 バスティン・メッソードは1963年からチョス社より世界中で出版され、今では14ヶ国語に翻訳されている。 1999年、MTNAはジムとジェーンの音楽教育への多大な貢献と成果をたたえて、最も大きな賞である"Lifetime Achievement Award"を授与した。 素晴らしい300以上の著作物によって、ジムとジェーンは革新的なピアノ教育者として知られるようになった。
◆ 収録曲・コンテンツ

コーディネート・解説:池川 礼子

曲名 映像
1. James Bastien/Mexican Fiesta / メキシコの祭り
明るい元気な感じを、シャープな音=アクセントと、左のスタッカートの和音を生かして表現しましょう。9小節目から歌をたっぷり右手で聴かせ、間に入る左の和音は軽く、カスタネットのようにリズミカルに。最後の8小節は、和音を思い切りカッコよく。八分音符の空間はあわてず決めましょう。
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2. Jane Bastien/Little Gray Burro / 小さな灰色のロバ
テクテク歩いている音を左手で素朴に、力まず。右手のシンコペーションで生き生きとしたメロディーをのんびりと楽しそうに。中間部、歩いている途中、何か発見したように、左から右に勢いよく弾ききる。最後の右手のスタッカートを生かして。17小節目、左と右でシンコペーションをユニークに決めた後、再び歩き出すロバ。中間部は、2小節ずつ2度下がり、f-mf-mpを確実に、全体に動きを持って弾き、のんびりのロバと対比させましょう。
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3. Jane Bastien/March of the Troll Dolls / 小びと人形のマーチ
しっかりとしたタッチを身に付けましょう。スタッカートもはっきり。4度や左の2種類の重音の繰り返しは、しっかりと歩く様子を表現しましょう。中間部は、全音音階をおもしろく、そしてレガートで。ひとつのフレーズごとの強弱のための指先のコントロールが必要です。レガートの為に手のひらに支えをもって、1音ずつにならないよう重みを移動させる感覚で。最後のフォルテッシモでは、両手を振り回さず、重みを指にかけるように弾きましょう。
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4. Jane Bastien/Dublin Irish Jig / ダブリンのジッグ
ヴァイオリンをたくみに弾いているような力強い右手、左もしっかり断定的に、打鍵のスピードを持って。9小節目からは、陽気なジッグが少し酔っ払ったように、ユニークに表情たっぷり歌わせて。17小節目からの同じ音型のフレーズは音色を陰らせ変化させましょう。ラストの交差はカッコよく!
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5. James Bastien/Rock Concert / ロックコンサート
左の刻みの和音をしっかりと、リズミカルでノリ良く演奏しましょう。7小節目の四分休符はきちんと取り、良い空間を感じて次に終止すること。中間部は3小節区切りのフレーズや、18小節目からの左手のタイのリズムが面白い。右手のスラーやタイとスタッカートをうまく生かすと、リズミカルでロックらしくなるでしょう。この3小節フレーズが3回繰り返され、7・8小節目と同じ2小節のフレーズで中間部をまとめます。ラストでもこの2小節のフレーズが繰り返され、だんだん暗くなり、コンサートは終了。
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6. James Bastien/Festival / フェスティバル
最初の右手和音は、ファンファーレのように。アウフタクトを導入にし、1拍目の付点二分音符のアクセントを思い切って弾いて、即、脱力し響かすと良いでしょう。9小節目からは、2小節のフレーズが3回ゼクエンツ(反復進行)されます。低いメロディーを表情豊かに、ベースの全音符をよく響かせて。それぞれ、右手の最初の3度をよく感じ、明るい響きから暗く陰っていくムードを味わって下さい。オクターブ上で2回繰り返した最後は、少しrit.し、大きく呼吸して、思い切ってファンファーレに戻り最後を華やかに締めくくってください。
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7. Jane Bastien/The Chinese Tea Party / 中国のティーパーティー
中国風の伴奏の4度の繰り返しを軽く、コップが少々カチャカチャしているのか楽しいムードで。5小節目からはお茶を注ぐような音をイメージして、上の音に一息でレガートに弾けるとよいと思います。最初のスタッカートの部分と対比させて音色の変化を試みてください。中間部は、会話がはずんだところでしょうか?元気よくはずんだ音で。mpのところは聞いている人の「フーン!?」と相づちかも。そして話はさらに盛り上がり、左5度、右4度のステキな響きが移動して終わり、また、お茶を入れるシーンとなります。
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8. Jane Bastien/Black Cat Tango / 黒ねこのタンゴ
「黒ねこ」が、大きく伸び上がって登場。レガートでたっぷりと。左手も「ターンタ」(付点八分・十六分音符)のリズムを2拍目に向かって心もちcresc.し、2拍目でdim.と表情豊かに。
「タタータ」(十六分・八分・十六分音符)のリズムもおもしろく。次の5小節目から8小節目はひとつの長いフレーズを意識して。9小節目からの2回目は、少々忍び足で、獲物を狙っているように。中間部は元気にジャンプして、踊っています。リズムに乗って弾きましょう。
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9. Jane Bastien/Rustling Aspen Leaves / ポプラの葉のささやき
拍子のおもしろい曲です。ポプラの葉が風にゆられてクルクル回っているように見えます。風のいたずらで、考え付かない動きがそれぞれの葉っぱに現れるように、軽く、不思議なリズムのまとまりが、自然の現象をあらわしているようです。最後の7の響きはやわらかなムードで、ほっとするようなステキな曲が感じられると良いですね。
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10. Jane Bastien/Village Square / 村の広場
とても元気の良い曲です。5度の拍手のような前奏を思い切りよく元気に鳴らし、曲が始まります。
楽しく踊っているメロディーに裏拍で和音を元気良くリズミカルに入れ、ノリよく楽しく弾いてください。6小節目などの刺繍音をにごらさず、スタッカートはしっかりとした音で軽く。八分音符の続く中間部では、右から左へスムーズに流れをつなげ、シンコペーションまで一息に。2回目は21小節目のA♭まで盛り上がり、22小節目の四分休符をカッコよくとり、cresc.して最初のメロディーにノリノリでもどってきます。ラスト、おしゃれな刺繍音のモチーフを高さを移動して軽快に踊りが終了します。
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11. Jane Bastien/Victory March / 勝利のマーチ
はっきりした音で、トランペットのようにファンファーレの前奏。左手の4度のマーチの音型の間に入る、1拍目主音へ向かうモチーフをよくうたって1拍目を決めること。
中間部、右手のなめらかな流れと左の和音がつながる部分は、同じことがDmで繰り返されるので、少し陰りを感じましょう。3回目にはまたFメジャーに戻ります。その変化も上手に表現しましょう。
中間部まとめの、左手和音の上部が半音ずつ変化するニュアンスもよく聴いて弾くと良いですね。曲の最後は、重音の連打は手首を楽にして使い、思い切りはじくようにffで。
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12. Jane Bastien/Final Exam Blues / 期末テストのブルース
テスト勉強のつらさや疲れが最初のメロディーから感じられるようなので、少しけだるそうなレガートで弾くと良いですね。中間部は下から上に一息で、つなぎ目を上手に弾けるようによく聴きましょう。離す音は、徐々に鍵盤を上げていき、次につなげるように心がけてください。最後1小節も不思議な響きを楽しんでください。
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13. Jane Bastien/July Fourth Square Dance / 独立祭の踊り
前奏の単旋律はしっかり太い音で。伴奏の1、3拍は、ベースとしてしっかり響かせ、リズミカルに。9小節目から10小節目の間は、CからGまでのぼり、11小節目のGに向かって、3連符はばたばたさせないこと。四分休符もきちんと感じ、sfzを面白く表現しましょう。中間部は低音で、ソ-ファ(♯)-ソ-ラ のかたまりをよく歌い、次に続くひとつずつ異なるメロディーを楽しんで弾いてください。
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14. James Bastien/Fifth Avenue Poodle / 五番街のプードル
とても元気な犬の足音を左手和音で表しているようです。はぎれ良く、乱れずいつも3和音の3つの音を均等に。特にベースの小指が浮いてしまわないよう注意しましょう。6小節目、Gで繰り返したときには、F♯の入る和音をおもしろそうに。14小節目から、散歩していたプードルが少し立ち止まるのか、同じ所でクルクル回り、何か変なものを見つけて知らせているように二分音符のテヌートをよく響かせると良いでしょう。同じことをリズムをつけて繰り返し、2小節ずつ音階が下がり、28小節目で盛り上がり、最初のメロディーに戻って、再び散歩を続けるように元気よく弾きましょう。最後に遠くへ行くようにdim. 、ppになった後、しめくくりをfで決める気持ちで。
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