ピティナ調査・研究

クレメンティ《ソナタ》作品24 第2番 より 第一楽章

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M. クレメンティ《ソナタ》作品24 第2番 より 第一楽章 Allegro con brio

掲載日:2012年4月15日
執筆者:上田泰史

クレメンティとモーツァルト

今日はロマン派からもう少し時代を遡(さかのぼ)ってみましょう。現代のピアノ学習者なら誰もが知るクレメンティ(1752~1832)。今日では専ら「ソナチネ」で知られるクレメンティですが、実のところ19世紀のピアノ演奏技法の基礎を創ったという点で、ピアノ音楽史上最も重要な人物の一人です。

1781年、クレメンティはウィーンを訪れ、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ二世の御前でモーツァルトと「弾き比べ」をします。後にモーツァルトは父に宛てた手紙で、彼の演奏が「機械的」だと報告しています。しかし、このウィーンの巨匠はクレメンティの作品に少なからず魅了されたようです。なぜなら、この《ソナタ》作品24 第2番、第一楽章の主題を、モーツァルトはオペラ《魔笛》序曲の主題に使ったからです。このソナタは1804年に《ソナタ 変ホ長調》 作品41として出版されました。有名になった《魔的》序曲と同じ調性にして出版し直せば、注目を集めるだろうという目論みがあったのでしょう。

演奏者の林川氏は優れた見識と洞察力を持つ作曲家でもあります。曲尾のカデンツァは林川氏の作曲によるものです。

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