ピティナ調査・研究

第98回 兼田 敏『秋のセレナーデ』

今月、この曲
兼田 敏『秋のセレナーデ』

ミュージックトレード社『Musician』2018年11月号 掲載コラム


私の誕生月でもある11月は、年間で最も好きな時期でもあります。文化の日、勤労感謝の日と、2回の祝日もあって、今年(2018年)は浜松国際ピアノコンクールも開催される月です。今からスケジュール帳を見て、ワクワクして待っているところです。

さて、この時期お勧めしたいのは、「秋のセレナーデ」(作曲:兼田 敏)です。4和音を基調としたお洒落な和声に、大きくうねるような音程のメロディーが自然に乗り、どんな人にも受け入れられるようなシンプルな構成です。

主部は16小節。4小節ずつのフレーズです。5度、8度など大きな音程が持ち味です。中間部は、半音階を生かしてやや性急で前のめりの印象を受けます。また、音域と和声のクライマックスを迎えるところです。そして、また主部が再現されます。このときは、1小節分"延長のフレーズ"が入ります。

大人のピアノの生徒さん数名に私のピアノ演奏を聴いていただき、その感想をもらいました。

全体的に切ない感じ/紅葉の中を一人で歩いているみたい/秋から冬に入るところ/枝の葉は一枚か二枚しか残っていない/中間部は急に風が吹いてきた!/途中、小動物(リス、鳥)が現れた/色で表すと、紫色このように、それぞれの方からカラフルなキーワードをいただきました。人の意見は、聞いてみるものですね!

この曲を掲載している楽譜は、今、私の手元に2冊あります。ひとつは「ピアノ・コスモス・シューレ 3」(全音楽譜出版社)、もうひとつは「大村典子ピアノピースセレクション 歳時記 B」(音楽の友社)です。調べてみましたら、作曲者の兼田 敏さんは、吹奏楽の分野で多くの作品を残している方でした(今世紀初めに、亡くなっていました)。

秋は、日に日に昼間が短くなって行き、早めに帰宅して読書でも、と考えたくなりますね。もちろん、ピアノの練習時間が増えたら、言うこと無しです!

調査・研究へのご支援