ピティナ調査・研究

第84回 カルロス・グァスタヴィーノ『サンタフェの少女たち』

今月、この曲
カルロス・グァスタヴィーノ『サンタフェの少女たち』

ミュージックトレード社『Musician』2017年9月号 掲載コラム

楽譜画像

最近、私の周りでも南米の作曲家を取り上げる機会が増えて来ました。独特のリズム感や和声進行が魅力的で、演奏会の中でも異彩を放っています。そんな中から今月ご紹介したい曲はカルロス・グァスタヴィーノ作曲「サンタフェの少女たち(邦題)」です。グァスタヴィーノは1912年、アルゼンチンのサンタフェで生まれた作曲家で、優れたピアニストでもありました。民謡や、ガト、ミロンガなどの舞曲を取り入れたピアノ作品を多く残しています。

この曲は2台のピアノのために書かれた「3つのアルゼンチンのロマンス」の第1曲で、同じくアルゼンチン出身のピアニスト、マルタ・アルゲリッチがCDに収めています。

まず第1ピアノの物哀しく美しいメロディーで始まり、8分の6拍子の揺れるようなリズムに乗って展開していきます。少女たちが戯れているように2台のピアノがモチーフを掛け合っていき、途中、つむじ風を思わせる素早いパッセージが表れると描写される感情は加速していきます。少しさみしげであどけなかなかった少女の心は大人へと変化し、強く吹きつける風をその頬で受け止めながら凛と立っている、そんな光景でしょうか。

そして「seco」(乾いた音で)の表示のあと、メロディーラインがffの和音の連続となり、少女たちは感情を露わにして何かを訴えかけているかのようです。しかしそんな激しい表情はつかの間、テーマの再現は静かにシンプルに進み、最後はつむじ風のパッセージが走り抜けていきます。これに続く第2曲「フヘーニョの子供たち」、第3曲「クージョの踊り」共に舞曲のリズムが際立つ異国情緒溢れる作品です。

日本からアルゼンチンへの直行便はなく、飛行機を乗り継いで25時間以上かかるそうですね。私も一度訪れてみたい憧れの地です。ワインだけでなくビールも美味しいとのこと。まだ蒸し暑い夜、遠くアルゼンチンを夢見てサルー(乾杯)!