ピティナ調査・研究

第80回 5月の風景

今月、この曲
5月の風景

ミュージックトレード社『Musician』2017年5月号 掲載コラム

楽譜画像

爽やかな風、日に日に増していく力強い光があふれ、新緑、沢山のお花が咲き誇る5月がやって来ました。新しい環境に慣れてきた生徒さんたちにも余裕の笑顔が溢れてきているようです。我が家でも心配な気持ちで見守っていた時期から、ほっとできる時間が増えてきたのが5月だったことを思い出します。このような時期になりますと柔らかく包まれるような、そしてその中に生命力、自然の風景が浮かぶ音楽に触れたくなってきます。

今月の出会いは、こどものためのピアノ曲集「お日様のキャンバス」、糀場富美子作曲です。「菜の花ばたけ」では、黄色の菜の花がそっとふいてくる風を楽しむようなメロディーが8分の6拍子で流れてきます。和音の響きの変化は何を表現しているのでしょうね。青い空、みずみずしい葉、花と春の色の中、次の曲は「自転車に乗って」です。3拍子、スタッカート、付点のリズムの曲で軽やかにウキウキとサイクリングをしている様子が目に浮かぶようです。その道沿いに力強くなってきた光で輝く小川「きらきら小川」が登場です。拍子の変化は、さらさら流れたり、何かで流れを遮られたりする表現と受け取ることもできます。最後は「お日さまのキャンバス」です。春の風景の中、お日様は大地に光で絵を描いています。音を出さないように押さえた音の中にメロディーがスタッカートで堂々と加わってきます。弾いた音以外の音がそっと聴こえてくる不思議な世界を味わえます。「耳を澄まして、静かな心で聴きましょう」と春のワクワクした気持ちを少し押さえて聴いてみましょう。

曲集の中から5月にふさわしいと感じた曲で音楽の風景画を作ってみました。木々の葉、色とりどりのお花、水、太陽などにある生命力や色、香り、空気を感じることができる自然、その自然の風景が音楽を通して感じられることに感謝です。