ピティナ調査・研究

第58回 モーツァルト=サイ『トルコ行進曲"ジャズ"』

今月、この曲
モーツァルト=サイ『トルコ行進曲"ジャズ"』

ミュージックトレード社『Musician』2015年7月号 掲載コラム

楽譜画像

この夏休みに「ピアノに向かってみよう」という計画があるなら、お勧めの楽譜があります。あの誰もが知っているモーツァルト作曲の「トルコマーチ」を、ジャズ風にアレンジした「トルコマーチ"ジャズ"」をご紹介します。

本来、モーツァルトの「トルコマーチ」は、ピアノソナタk.331のロンド形式で書かれた第三楽章になります。当時、流行のトルコブームに感化されたモーツァルトは、ピアノを愛好するマダム達を相手に作曲したと言われています。譜面には「トルコ風」としか記載されていないのに、人気を博した結果、いつしか「トルコマーチ」とあだ名がついて、この楽章だけ一人歩きを始め世界中で親しまれるようになりました。

この「トルコマーチ」をジャズ風に編曲したファジル・サイは、1970年生まれ、トルコのアンカラ出身。クラシック音楽だけではなく、ジャズにも造詣の深いピアニスト兼作曲家であるサイ。トルコ文化に感化されたモーツァルトの「トルコマーチ」を、トルコ出身のピアニストがジャズ風テイストを盛り込んで編曲しているところが、なんともグローバルではありませんか!

サイは自身の演奏会のアンコール曲として「トルコマーチ」をアレンジ演奏したところ、評判が良く出版されるに至ったという経緯があります。編曲では「トルコマーチ」のオリジナルテーマが二度目に現れた途端、ジャズ風に躍動し始めます。原曲とジャズテイストの編曲を混在させ、そのコントラストが実に目まぐるしく活き活きと描かれているので、聴いても弾いても楽しいのです。アクセントの位置をクラシック本来の表拍から、ジャズの持ち味である裏拍へと、場面場面で切り替えながらの演奏は正にスリリングと言えます。

ジャズアレンジの効いた「トルコマーチ"ジャズ"」ならパーティなどで披露しても場が盛り上がること間違い無しです。問題は、実際に弾いてみると案外難しいってことかな......。